「これ要る?」
見たら、おかもちでした。
「もちろん、要るよ」
木工室がビニールハウスの仮設だったころ、陽射しや風や埃、時には雨まで容赦なく入り込みました。そのため、大切にしたいものの置き場所の確保もままならず、一部は母屋の階段室に置いていました。
極細の釘や細いドリルの刃などの細々したものは、それぞれ小さな缶などに入れ、その缶を、漆塗りの木のたらいや、おかもちに並べて、さらに母屋の工事の時に使っていた工具の棚に入れておいたのでした。
作業棟に棚や引き出しができるにつれて、細々したものたちもそれぞれ置き場所が決まり、おかもちや桶はお役目ごめんとなりました。
工具用の小さな棚だけは、今では物置ではなく、「作業の友」という本来の姿を取り戻しています。
さて、おかもちは見た目より古いもので、底には、
「明治参拾八年七月吉日求む 持主 山田善吉」
と記してあります。
明治三十八年と言えば、1905年、百年以上前のものです。
軽くてきゃしゃに見えますが、がたつきもありません。
おかもちですから、てっきりお蕎麦屋さんなどが出前用に使ったものだと思っていたのですが、よく見ると側面に、
「葡萄要(用の間違い?)」
と書いてあります。
収穫用に使ったのでしょうか?
日本に、ヨーロッパブドウが中国経由で輸入されたのは鎌倉時代初期で、甲州だけで栽培されました。
明治になると、ワイン用のブドウがヨーロッパから次々と輸入されましたが、ほとんど栽培に失敗しています。そして、アメリカから輸入されたブドウは、ワインには向きませんでしたが、生食用として、昭和初期には定着しました。
明治三十八年にブドウを栽培していたこのおかもちの持主は、いったいどのあたりに住んで、どんなブドウを栽培した、どんな人だったのでしょうか?
懐かしい言葉と容器ですね
返信削除盥などは昔から購入日などを底に書きましたね。
甲府には「月のしずく」と言ったブドウを加工した
土産物があったような?
おはようございます。
返信削除長寿のおかもちを拝見して、以前「デンマークの民具」で拝見したお弁当箱を連想しました。
というのも、映画の中で、デンマークのお弁当箱に似た物がおかもちのようにして使われていたからです。
映画は、今Gyaoで無料配信中の「バベットの晩餐会」です。
台所、調理器具、そして料理のシーンがたっぷりで、何度も見返しています。
ブログを拝見していたおかげで、ストーリーだけでなく生活道具なども楽しめます。
嬉しくなって、お知らせしたいと思いました。
追伸です。
返信削除映画の舞台はパリ・コンミューン前後のユトランド。
デンマーク映画です。
ご存じかとも思いますが。
昭ちゃん
返信削除おかもちは、昔は街角でもよく見かけたものでした。バイク配達になってからは、ばねのついたところにおかもちを下げていましたね。取っ手がない、四角いお盆にお蕎麦をいっぱい重ねて、自転車で配達する姿も当たり前に見ていましたが、もう、あんな曲芸のようなことは誰もできなくなったのでしょうね。
私の小さい頃のブドウと言えば岡山のマスカットでした。お見舞いやお土産にいただいたりすると、一度にたったの二粒くらい、もう宝石でも食べるようにいただいていました(笑)。
blueskyさん
返信削除わぁ、映画知りませんでした。
夫はしょっちゅう無料映画を観たり、音楽を聴いたりしているのですが、私はコンピュータで映画は、まだたった一本くらいしか見たことがないのです。ついつい気が散ったりして。
テレビでも、映画の予告を見て、「あれ絶対見よう」と決めていても、たいてい逃してしまいます(笑)。今夜、夫にどうやって観るのか訊いてみて、行きついたら観てみます。ありがとうございました。
blueskyさん
返信削除バベットの晩餐会観ました!
面白かった!それに、家も、村も、スウェーデンの曲木の箱、ゴッホの椅子、柳の籠、浜辺の石などなど、どれもどれも興味深いものでした。
曲木の箱は、小さいのはお弁当箱にして、大きいのは食品の保存容器にするのだと思っていましたが、あぁやっておかもち代わりにもしていたのですね。
教えていただいてありがとう。
ご覧になったんですね!
返信削除春さんなら興味をもたれるだろうと思いました。
そして私も、石を拾いに行きたいと思いました。
食料品店でバベットがベーコンをもらって出て行ったあと、
おばあさんが指をこすり合わせて見せながら「彼女は賢いね」と言う場面がありますでしょう。
あの仕草は中国人も使います。お金の意味です。
そんなところも面白いなぁ…と思いながら見ました。
blueskyさん
返信削除指をこすり合わせるしぐさ、知りませんでした。
ただlよくわからなかったのは、何故食べ物の話を封印したのか、禁欲的に生きているからなのか、動物は宗教上の理由で食べないのか、あるいは変わった動物は食べないのか、見落としたのかもしれませんが、よくわかりませんでした。
そういえば、村に若い人たちが何故いないのかも、よくわかりませんでしたが、でも、わからない部分は置いておいたとしても、とっても面白かったです(笑)。
海岸の石は、2015年にデンマークに行ったときの感じと、とてもよく似ていました。ただ、映画の最初の部分、ちょっと土地に起伏があるような感じでしたが、なにせデンマークの最高峰は153メートルだったか、もっと平らだよなと思いました(笑)。