2017年5月29日月曜日

最近読んだ本

2005年だったか、それまで読んでいたA新聞をやめて、東京新聞にしました。
夫の家にも、私の家にも、生れ落ちて気がついたらA新聞がありました。そんな長いつき合いでしたが、やめてほっとしました。広告に、記事に、イライラすることがなくなったのです。

東京新聞は、中東の報道など(最近は少ない)、その正確さに満足していましたが、原発事故以来、さらに腰を据え、報道者としての任務を全うしようとしているように見えます。ところが、こと本の紹介に関しては、まったくおもしろみがありません。
本紹介の定期的な記事も各種あるのですが、書評を読んでみても、興味をそそられません。そして、新聞全体に広告が少ないのは歓迎ですが、本の広告も少ないのです。

というわけで、本を知る機会が狭められてしまっているなか、北海道に住むのらさんから定期的に届く「のらつうしん」の中に、ときおり紹介されている本は、いろいろ参考になります。
化石、植物、鳥などに詳しいのらさんのことですから、本は自然科学関係のものや、北海道に関するものも多いのですが、それだけではなく、小説、児童書から絵本まで多岐にわたっています。


そんな、のらさんが紹介していた本たち、『アイヌと縄文』(瀬川拓郎著、ちくま新書、2016年)です。
その昔、考古学者というものは、どこまでいっても「推測」の域を出ないから、歯がゆいだろうなと思っていたのですが、今ではいろいろな科学的な調査、例えば花粉の分析などから、「いつの時代」の、「なに」かを「断定」されることが多くなっています。
そんな、各分野での研究成果を突き合わせ、つなぎ合わせると、いろいろなことが見えてくる、その最新の現場をのぞくという感じの本です。


『見習い物語』(レオン・ガーフィールド著、斉藤健一訳、岩波少年文庫、2002年、原作は1982年)は、イギリスの18世紀の徒弟制度の中で、見習いとして働く少年少女たちのことを描いています。
当時、イギリスでは、どんな見習いでも、期間は7年と決まっていました。子どもを見習いに出す親は、それぞれの職業で決められた金額を親方に払い、親方は食事と住まい、そして仕事の知恵を見習いに与えました。
この本には、12の違う職業の見習いたちが出てきます。それが、全く別の話ではなく、一つの話に出てきた人が別の話にも出てきたりして、ロンドンの町全体が立体的に見えてくるように書かれています。
衛生状態が悪く、空気も悪く、貧困やいじめが満ち満ちている世界で、たくましく、ささやかに生きる見習いたち、そして親方たちが描かれています。


のらさんが、初めて『ハイジ』(ヨハンナ・スピリ著、竹山道雄訳、岩波少年文庫、1952年、原作は1946年、あれ、これは英語訳の年かな?)を読んだというので、読み返してみました。
今回読み返してみて、こんなにキリスト教色の強い本だったかと、改めて思いましたが、楽しみました。


これものらさん紹介だったと「のらつうしん」をひっくり返してみましたが、見つからなかったので、もしかしたら違ったかもしれません。

『太陽と月の大地』(コンチャ・ロペス=バエス著、宇野和美訳、福音館、2017年、原作は1984年)は、スペインにおけるキリスト教徒によるイスラム教徒の排斥に翻弄される人々を描いています。
1492年に、イスラム王国だったグラナダはカトリック王に制圧されますが、その後の数年は、それぞれの信仰を持ちながら、同じ土地に平和に共存します。
しかし、キリスト教徒は権力に乗じて強引で無理解な態度をとるようになり、恨みを募らせたイスラム教徒は1500年に反乱を起こして敗北します。以来、イスラム教徒は改宗するか、国外に退去するかの選択を迫られました。
すぐにアフリカに逃れた人もいましたが、故郷を去りがたい人は、改宗してとどまり、改宗したイスラム教徒は「モリスコ」と呼ばれました。
それから百年余り、1611年にイスラム教徒が完全に国外に追放されるまで、友情と怨恨、裏切りと忠誠が入り乱れた苦難の時代が続きます。
そんな時代を背景に、16世紀後半の、キリスト教徒とモリスコの二家族の物語です。
最後は、涙なしには読めませんでした。

キリスト教を太陽に、イスラム教を月に例えていますが、イスラム教は月でいいとして、キリスト教が太陽というのは、私にはしっくりきません。むしろ、星ではないでしょうか。
太陽と言えば、キリスト教に駆逐されてしまった、数々の多神教やなど、もっと土着のものを思い浮かべてしまいます。






2 件のコメント:

  1. 眼底剥離手術から遠視用のレンズを入れたので
    読書は不自由になりパソコンは
    かろうじてレンズをとおして打っています。
     ハリーポッターが流行った頃昼休みの生徒たちは殆ど
    この手の本でしたね。
    「昭ちゃん先生はどんな本が好き」っと。
    (いくつになってもどこでも似非先生はこう呼ばれています)
     私は即寺田虎彦の随筆・北越雪譜・福翁自伝がベスト3っと、
    その後ジュニア版がありましたね。
    読書がしたいバイ。

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  2. 昭ちゃん
    それは残念ですね。私の息子も本の読み過ぎで目が悪いのですが、私に電子版を勧めます。明かりが入っているので暗いところでもはっきり見えるし、スマホは本より軽いし、字も自在に拡大できるからと言います。
    とくに漫画は、雑誌サイズを縮小しているので、単行本になると読みづらく、文庫などではほとんど見えないのが、電子版は拡大できるし、何巻でも入るのでいいと言います。私は試していませんが、昭ちゃんはお助けさんたちに訊いてみたら?
    いいかもしれませんよ(^^♪

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