2018年3月5日月曜日

薬匙


なんだか具合が悪いとき、漢方薬局に行って症状を話すと、生薬を煮出して液体の薬をつくってくれますが、ときには丸薬もつくってくれます。
そんなとき、穴の開いた、プラスティックの匙がついてきます。


一すくい10粒、たいてい一度に30粒くらいは飲むので、この匙で三回計ります。
それを、朝昼ともなると、なかなかおっくうになり、ついつい、せっかくつくっていただいたのに飲み残してしまうということになります。
それでもこの匙は便利にできているなぁと思っていました。数えなくていいのです。


ところで、佳乃やの「美しきものたち」展で見つけたのは、木でできた、丸薬を数える匙でした。
プラスティックのない時代は一つ一つ数えていたのかと思っていたら、これで数えていたのです。
二つあって、どちらにしようか迷いましたが、小さい方をいただいてきました。どちらも100粒計れるもの、大きい方は心持ち穴が大きいようでした。


裏には、大正七年秋と書いてあります。1918年、ちょうど100年前です。


プラスティックの匙より、詰めるのに少し技術を要しました。
たぶん、穴の深さが足りないのだと思います。丸薬と丸薬の上に丸薬が乗ったとき、それを落とそうとあまり傾けると、穴に入っている丸薬までこぼれ落ちてしまいます。


100粒計れるのですから、薬を飲む人用の匙ではないと思われます。
売るとき、一粒一粒数えるよりは早いし、買う方も納得できます。もっとも、目方で売買すれば問題はありませんが。


それにしても穴はどうやって開けたのでしょう?
ネットで似たものがないかと調べてみましたが、大きい、似た匙は見つけられませんでした。


薬局用ではなく、飲む人用の匙としては、20粒計れる真鍮のものがありました。
また、やはり20粒計れる、木製か金属製か、写真ではちょっとわからない匙もありました。木でつくるより、金属の方がつくりやすそうな感じがします。

右二つは粉薬用の薬匙

匙の材料となった木は、手にするととても馴染みのある木に思えるのですが、栗なのか、あるいは櫛にもする椿なのか、はっきりとはわかりません。
薬を計る作業を軽くするためか、匙の厚みはわずか6ミリと、とても薄くつくられています。100年も割れずによく残ったと、感心してしまいました。





2 件のコメント:

  1. いろんな道具があるんですね!でも丸薬のサイズが均一じゃないとたぶんだめですよね?昔は手で丸めたと思いますが、上手く同じサイズにできたんでしょうか?
    最初の方に写っている背景は食卓ですか?表面に凸凹が付けて合って面白いですね!友達の家の床もこのような加工がしてありました。

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  2. hiyocoさん
    私も小さな丸薬は、機械がない時代、どうやってつくったのか不思議に思っています。つなぎが入っているとして、手で丸めたんだろうか?つくり方は、奈良時代に唐の高僧鑑真によって伝えられたそうです。
    機械がある時代といっても、工場ならともかく、近くの漢方薬局でつくってくれるのが不思議です。そんな小さな機械もあるのでしょう。
    ただ、この匙は大正時代のものですから、もう機械のある時代ではないかと思います。正露丸とか救命丸とか、丸薬の大きさは似たりよったり、これで間に合ったんじゃないでしょうか。ちなみにこの写真に写っているのは桂枝茯苓丸です。

    背景は、祖母の家にあったお盆というか脚のないお膳です。木を彫り出したもので、10枚くらいあったのを母が適当に5枚ほどくれたものです。一時、大皿料理だと、たくさんつくりすぎて私たち夫婦は食べ過ぎてしまうので、これをお膳にして、小さい器にちまちまと盛って食べてみましたが、長続きはしませんでした(笑)。あっという間に良き習慣はなくして、大皿料理どころか、昼野菜を食べたから夜は魚だけでいいやといったテキトーな食生活を送っています。

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