2018年7月12日木曜日

織り機は日の目を見られるか

ホールができたらその片隅に、地下室で湿気とカマドウマの餌食になっている織り機を置こうと思っていました(夫は邪魔だとしぶり中)。

織りものは、メインの織り機だけでなく、経糸(たていと)を織り機に掛けるための道具(畳めるけど大きい)、綾をとるための道具などなど、周辺道具もたくさんあります。


まず、袋に入ったこまごましたものを取り出してみました。湿気で袋は破れ、カマドウマの糞が積もっています。


開けてみると、金属の筬(おさ)は、さっび錆の錆です。
最近では筬はきっと、鉄製ではなく、ステンレス製でしょう。


機草(はたくさ)はカビだらけです。
私が織りものを習った1970年代初頭、織りものの習える場所は限られていました。私の先生はノルウェーに二年留学されて織りものを習われたFさんで、メインの織り機をはじめ、おもな道具や織り糸はノルウェーから輸入していただきましたが、日本で調達できるものは日本で調達しました。
この機草は樫の木でできているので、日本のものです。

機草は、経糸(たていと)を織り機に巻きつけるとき使います。長い経糸をそのまま「巻き取り棒」に巻くと、一重目の上に二重目を巻くことになり、糸がぐちゃぐちゃに食い込んでもつれやすくなり、また一本一本の経糸の張り具合が違ってきます。

花巻の農業伝承館で見た経糸の巻き方

そのため、例えば日本では、伝統的には厚めの和紙を経糸と一緒に巻いて、一度巻き、二度巻き、三度巻きの経糸が交じり合わないようにしますが、私の習った方法では、機草を挟みながら巻きます。

「機織り職人の仕事場から...」から借用。竹の綾棒

織りものは、経糸が互い違いに上下に動き、その間に緯糸(よこいと)を通していくことによって織れます。
織り機に経糸を掛け終われば、あとは織るだけなので、作業としては60%から80%ができ上がった気分になります。

その経糸は、織り機に掛ける前から、もつれないように、あらかじめ綾棒を一本おきに通しておきます。これで、経糸が何千本あろうと、順番が入れ替わったりすることがなく並びます。
この一連の作業を、「綾をとる」と言います。


そしてこれが私の綾棒、ノルウェーからのもので、松の木でできています。
  

全部洗って、拭いて、乾かしました。


踏み木の何本かは虫に食われていて、押すとぺこぺこします。
踏み木は、経糸を通した綜絖(そうこう)と紐でつなげて、足で踏んでを上下させるものです。


踏み木の中には、カビがあまり生えていないものもありました。
未使用だったので、汗や手あかが染みていなかったからかもしれません。


その未使用の踏み木は、使っていた踏み木より短いことに気づきました。
「あれっ、短い踏み木はどんなとき使うんだろう?」
もう30年以上も織ってないので、何が何だか、すっかり忘れてしまっています。

さて、背骨を圧迫骨折してから重いものは一人では持てません。
織り機を、地下室からホールまで運んでくるには、夫の手助けが不可欠ですが、夫はホールに織り機を置くことに難色を示しています。集会があるとき邪魔だから、母屋に置けばいいと言うのです。
確かに夏には、建築家の連中が来たり、秋には友人でジャンベとアフリカンダンスを楽しんでいる夫婦とそのジャンベ仲間が来たりと、いろいろありそうです。
でも、母屋の織り機を置くための場所としてつくられたところには、材木屋さんからいただいた、杉の根っこの重い台や、机などが置いてあり、こちらも一人では何ともなりません。
織り機が日の目を見るまでは、まだまだ前途が長そうです。





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