2018年9月3日月曜日

『HAND TOOLS』

本を見たり読んだりするのは楽しいことですが、本棚の整理もそれと同じくらい楽しいことです。
「あれっ、こんな本があった!」
探していた本が見つかったり、忘れていた本が見つかったり、ときには同じ本が二冊あったりします。
そんな本棚の整理をしていて、こんな本が見つかりました。


『Collectible HAND TOOLS』(ドミニク・パスカル著、Flammarion発行、フランス、2004年)です。


目次を見ると、農作業道具(林業畜産を含む)、木工道具、金工道具、革細工道具、大工道具、そして最後に「びっくりする道具」が紹介されています。
西洋人にはどうか、西洋の古い道具に慣れ親しんでない私には、「びっくりする道具」以外にもびっくりする道具があるし、びっくりする道具の中には、形というよりは使い方が珍しいというものもあって、単に「その他」でいいのではないかと思ってしまいました。
目次を見て気がつくのは、台所道具の章がない(漁具もないけれど)ことです。農具の中に、バターの型、ミルクからクリームをすくいとる匙など、いくつかは台所道具も含まれてはいますが。

台所道具は、手の道具の宝庫です。それを載せていないなんて、何か理由が?
そう、このコレクタブルシリーズは、「男の」と断り書きをつけたいほど、男の匂いに満ちた本なのです。
ちなみにこの本の姉妹本(というより兄弟本か)はいろいろあるのですが、『ポケットナイフ』、『パイプ』、『ミニカー』、『兵隊人形』、『時計』などなど、どれも男の好きそうなものばかりで、「やっぱり男と女は違うよ」と、苦笑してしまうラインアップなのです。
もっとも、男である我が家の夫はそのどれにも関心がありませんが。

それはさておき、この本に集められている道具を見ると、
①同じ機能で動力で動くものが現れたので、消えた道具
②生活習慣が変わって必要なくなった道具
③100年、あるいはそれ以上前とほとんど変わらない形で、今でも使われている道具
の三種類に大別できると思いました。

①同じ機能で動力で動くものが現れたので、消えた道具


ハンドドリルです。私も数十年前、前に住んでいた家で本棚のダボを埋めたり、釘隠しをはめたりするのに、これと同じものを使っていました。
今はすべて電気、あるいは電池で動くインパクトドライバーを使っています。


これは私が持っている、本に載っているものよりシンプルな、彫り出した木に丸のみをつけたハンドドリルです。

鋸やかんなは、電動のものが普及したとはいえ、昔ながらの手道具も使いますが、穴をあけるドリルは、我が家でも電動以外、使うことはありません。


そういえば、この鋸の写真を見て思い出しました。下の段のと同じものを持っていますが、ただいま行方不明中です。どうして大きなものなのに、行方不明になるのでしょう。


同じくの、芝や生垣の刈込ばさみです。
電動化されて以後も、刈り込みばさみは手で動かすものもよく使いますが、バリカンのような、刃がいっぱいついた芝刈りばさみは、今では使う人はいないことでしょう。

②生活習慣が変わって必要なくなった道具


一日の仕事を終えた家畜の汗をぬぐい取ってやる道具だそうです。そうすれば、汗を落とせて、家畜が風邪をひいたりすることがありません。
家畜のための道具は、『HAND TOOLS』にはたくさん載っていますが、家畜のいる生活そのものが変化してしまったので、それにつれて、道具もほとんど消えてしまいました。

③100年、あるいはそれ以上前とほとんど変わらない形で、今でも使われている道具


剪定ばさみ、金づち、ペンチ、ハンドドライバー、やっとこなどは、ほとんど形が変わっていません。この形の剪定ばさみの原型はいったいいつごろできたものなのでしょうか?


我が家の剪定ばさみも、同じような形、左はスイスのフェルコ製、右は日本の村久製です。フェルコ製は刃を取り外しできます。
山形の村久製はかねぽんさんがたくさん持っていらっしゃいます。見ているとつい欲しくなり、買ってしまいましたが、もったいなくて使わないでいるものです。
日本には西洋リンゴの剪定のために1875年(明治8年)にこの形のはさみが輸入され、それを真似て日本でもつくるようになったそうで、山形で、この「ドイツ鋏」の生産が始まったのは明治の中頃のこと、養蚕に使われたようです。

番外編


これは、農作業道具に分類されていたものですが、どちらも馬医者が使った、尾を切り詰めるはさみだそうです。


インドの檳榔樹を切るはさみと、原理が似ていません?
何か関連があるのでしょうか。


道具は元々は必要に応じて各家庭でつくられたものです。家庭でつくれないものは、鍛冶屋さんなど、特別な技術に特化した人によってつくられましたが、やがて、家内工場でつくられ、そして大工場で生産されるようになりました。

100年以上前のものとほぼ形の変わっていない、剪定ばさみ、ペンチ、金づち、やっとこ、ハンドドライバー(ねじ回し)なども、形は似ていても、今では機械で大量生産されたものの方が主流になりました。






2 件のコメント:

  1. おはようございます。
    とうとう誘惑に負けて買ってしまったんですね。
    それはさておき、ヨーロッパの古いハサミ、ラチェットがついてるのが面白いですね。ボルトのゆるみ防止のためか、それとも何か他に機能があるのか気になるところです。右側のはボルドー・スタイルと書いてますから、きっとブドウの剪定に使われたんでしょうね。

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  2. かねぽんさん
    とほほです。一本だけですが、手に入れてしまいました(笑)。
    ラチェットですか?私が今使っているのにもしっかりついていますよ。外して研いだ後、締め方を加減したのでしょうか?研いでいないので外してみてもいませんが。
    その時その時水洗いしているつもりでも、だんだん汚れちゃって。でもネットで見ると、使う時間より手入れの時間の方が長くかかるという人もいて、それは刃物全体に言えること、そこが大変ですよね。まぁ、そこが楽しみにならなくてはならないのですが。それにしても、砥石ではなく2000番のサンドペーパーで研ぐという記事がいくつかあって、「へぇそうなん」と驚きました。考えたこともありませんでした。
    ボルドー、よく読めましたね!自慢じゃないけれど、眼鏡をかけても私には読めません。ブドウ農家、リンゴ農家、養蚕農家などなど、毎日のことだから道具だけはいいものをそろえているのでしょう。

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