2018年11月4日日曜日

「八郷村のあるめおと」

今年は飛行機で行った神戸、茨城空港からは早朝の便と夜の便の二便しかないので早朝の便に乗り、約束の時間より早く着きました。


事前に、目的地の神戸芸術工科大学の近くの太山寺に行ってみようと決めていたので、地下鉄やバスを乗り継いで行ってみました。
河原で持っていったお弁当を食べて、太山寺の境内をちらっと散策しましたが、まだ時間があったので、門前にあった温泉に入り、無料のマッサージまでしてもらって、私たちはすっかりくつろいでいました。
そこで、はたと気づきました。
「今晩は温泉で食事して泊まると言っていたけど、もしかしたらここじゃないか?ホテルがあるし、学校から近いと言っていたし」
その翌日、夫が学校で講義することになっています。
「えっ、そうかな?まさかね」

さて、約束の時間に学校を訪ね、Sさんにお会いしました。
「今日は、急な会議が入ってしまって、ご案内できなくて申し訳ありませんでした?どこかへ行かれましたか?」
夫と私は顔を見合わせました。
「太山寺に行ったけれど、もしかして今晩行くとこ?」
驚いたのはSさんでした。
「えぇぇっ!そうですよ。なんともう行かれたんですか。どうしてまた太山寺に?」
神戸と言えば名所はどこ?おしゃれなカフェとかもあったのでしょうか?
私たちは、関西出身の友だちがネットで選んでくれた、「学園都市駅」周辺の観光スポットの中から、「ここだったらのんびりできそう」と選んだだけでした。
行ってみると、平安時代に開けたという太山寺周辺には古い民家もあり、何といっても温泉は時間をつぶすのに最上のものでした。
「太山寺の本堂に入りました?」
「入ってない」
「阿弥陀堂は?」
「見てない」
境内に入れていただいたとはいえ、夫は五重塔のわきのベンチに寝っ転がっていただけだし、私はドングリを拾っただけでした。

私たちは、S夫人をピックアップして、もう一度太山寺に行きました。
「まだ開いているかなぁ?」
車を降りて、Sさんが心配顔で見上げた石垣の上では、おりしもご住職が扉を閉めようとなさっていたところでした。
「間に合った!」
Sさんはさびれていたお寺の整備にかかわられたので、ご住職とはごじっこんですが、ご住職のお住まいまで訪ねて開けていただくわけにはいきませんでした。


まず、阿弥陀堂に入り、重要文化財の阿弥陀如来を拝観させていただきました。


鎌倉時代の寄せ木造りで、とてもいいお顔をされていました。
阿弥陀堂はやはり鎌倉時代につくられたものでしたが、火事で焼けて、江戸時代に再建されたそうです。
「お寺が全焼したのに、阿弥陀様は無事だったんですか?」
「はい、不思議ですけれど、運び出されたのでしょうね」


阿弥陀堂は、東南の方向に向いています。
Sさんのお話では、朝日が石畳に反射したときに、お堂の中の阿弥陀様を照らし出すのだそうです。


もう閉めてあった国宝の本堂にも入れていただきました。


しかも、普段は格子戸越しにしか拝観できない、やはり鎌倉時代に彫られた四天王も間近で拝観させていただきました。ご住職がライトで照らしてくださっています。


クスノキの一刀彫、木は太く、彫りは見事でした。
もし、昼間の訪問だけだったら、私たちは高校のとき古文で習った徒然草の、「仁和寺のある法師」になってしまうところでした。

ちなみに「仁和寺のある法師」は、一念発起して石清水八幡宮に参拝した仁和寺のある法師が、入り口あたりの僧坊しか見ないで帰ってしまったのに、全部見たつもりでありがたがっているというお話で、
「すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり」
と言うのがその教訓です。







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