2019年8月18日日曜日

雪わたり

山梨から、Mさんご一家が遊びに来ました。


一行は、KさんとYさんご夫妻、高校生のHくんと大学生のTくん、それにM一家の友人の娘さんであり、HくんTくんの幼馴染であるKちゃんの5人でした。喧々諤々、議論は沸騰して、気がついたときは、すでに夜中の2時というありさまでした。

さて、Yさんは週明けからすぐに糸操り人形で宮沢賢治の「雪わたり」を演じるための練習に入らなくてはならない、ということで、人形たちを持ってきていて、見せてくれるとともに、話しながらもボディーを軽いものに取り替えたり、タコ糸を棒につけたりと、寸暇を惜しんで手を動かしていました。
ちなみに、夫は人形が怖いと言い、我が家にもいろいろ人形がいるというのに、あやつり人形たちから目を背けてほとんど見ようとしませんでした。

「雪わたり」は子どもと狐のお話です。
四郎とかん子が狐の悪口を言っていると狐の紺三郎が出てきて、二人に黍団子を勧めます。しかし、かん子がついつい「キツネの団子は兎のくそ」と言ってしまいます。それを聞いた紺三郎は気を悪くし、嘘つきは人間の大人の方であると主張します。そして、それを説明するための幻燈会に二人を招待します。
四郎とかん子は恐る恐る狐の小学校の幻燈会に参加します。
幻燈会のあとで、紺三郎は団子を勧め、四郎とかん子は迷いながらも食べると、それはとてもおいしい団子で、子どもたちと狐たちは、お互いの理解と信頼を深めました


さて、人形はかしらと着物は専門の作家さんがつくり、ボディーや着つけはそれを遣う人が組み上げます。たまたま、かしらをつくる昔なじみの方が近くに引っ越していらしたので、今回の上演会が実現したそうです。
Yさんは、かつて10年弱劇団にいた経験があるのですが、組むことをさせてもらったことはないので(いつまでも、まだ早いと言われて)、見よう見まねでやっているそうです。
たとえばこのかん子は、これでは帯を胸高に締めていないので、幼い子どもには見えません。これから着せなおすそうです。
また、大きく見える足は雪靴をはいているのですが、子ども以外、女性の人形に足先はありません。


こんなふうにあやつります。


このあやつり人形は、江戸あやつり人形の流れを汲んでいるのだとか、私は江戸あやつりをまったく知りませんでした。


ちなみに、文楽の人形は、1人で遣うのではなく、主遣い、左遣い、足遣いの3人で1体の人形を動かします。


日本のあやつり人形がマリオネットと違うのは、首が左右と上下に動くだけではなく、前にも動くので、首の動きできめ細かい情感が表せるそうです。
    

こちらはその他大勢の狐の子どもたち、四郎とかん子が招待された小学校で、一緒に幻燈を見る子どもたちで、3体ずつ70センチほどの棒にぶら下げて動かします。
これを「めざし」と呼びますが、今回の「めざし」の遣い手は小学生で、3体も一緒なので少しでも軽い方がいい、ということで、Yさんは話しながら、一度組んだ木の身体を外して、紙を固めてつくった身体と、取り替えていました。


3体一緒なので複雑な動きはできませんが、狐たちも一体一体個性のある顔、しかも首をあげたり下げたりすると、いろいろな表情を見せることができます。


ネットで、「めざし」の遣い方を見つけました。
その他大勢というわけです。


「雪わたり」は、旧津金小学校の古い教室で上演します。
山梨県には、明治初期に県令(県知事)として藤村紫朗が在任した時代に、100にものぼる洋風建築が建てられ、これもその一つ、元あった場所に残されています。
人形劇の背景に、幻燈会を模したスライドを映すのですが、その絵を描いたのもM家のお仲間、数家族の手づくりによって「雪わたり」は上演されるそうです。





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