2020年4月14日火曜日

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』


プレイディみかこさんの、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社、2019年)は、昨年、ラジオ番組の「久米宏ラジオなんですけど」にゲストで来られた時の放送を聴いて知っていました。
そのときのお話は面白かったのですが、本を読むには至りませんでした。それよりずっと前に、『子どもたちの階級闘争』も知っていましたが、これも何かのラジオでプレイディみかこさんのお話も聴いたのですが、読むには至りませんでした。
最近友だちが読んだと知り、思い出して『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んでみました。

舞台は英国のブライトンの町、一家は、「荒れている地域」と呼ばれる、元公営住宅地に住んでいます。
みかこさんは保育園で働く保育士、23年前に出会ったころには銀行員だったのに、数年後にリストラにあい、「子どものころやりたいと思っていた仕事だから」と大型ダンプの運転手になったアイルランド人の配偶者さんと、11歳の一人息子くんと暮らしていています。
物語は、息子くんがカトリックの小学校を卒業するときになって、進学する学校を選ぶため、地元の元底辺公立中学やカトリック中学の見学会に行くところからはじまります。配偶者さんは、元底辺中学校は「9割が白人だからいじめられる」と大反対だったのですが、息子くんは(一緒に見学に行ったときお母さんが楽しそうにしていたこともあり)、元底辺中学校を選んで入学します。

元底辺中学校の生徒の大半は、貧しい白人がですが、その中にも貧富の差があります。
東洋人を母に持つ息子くん、ハンガリー移民の子ども、途中から入ってきたアフリカ系移民の子どもは少数派です。というのもほとんどの移民は、まだ子どもが小さいころから、学力ランキングの高いカトリック校に入れようと、やっきになって改宗したりしていて、子どもをカトリック校に通わせているからです。

息子くんは、レイシズム(人種差別)や、貧困問題、友だちへのいじめの問題などに直面し、その中でいろいろ考えます。
「人はよってたかっていじめるのが好きだからね」
とお母さんが言うと、息子くんは、ちょっと考えて、
「僕は人間は人をいじめるのが好きじゃないと思う。罰するのが好きなんだ」
と言います。


息子くんの小学校のときの同級生たちは、ほとんどみんなカトリック中学に進学しましたが、ランキングの高いカトリック校にも、陰があるようです。
学力を維持するため、できない子は切り捨てられていて、一つの教室の前と後ろに深い分断ができています。
元底辺中学校のシティズンシップ教育(社会人教育)の話、日本で息子くんが差別される話、息子くんが自分のアイデンティティについて考える話などなど、一気に読める面白さでした。

日本は、これ程には多様な社会にはなっていないと感じるかもしれませんが、見えていないだけで世界と密につながっていることがわかった、今度の新型コロナウイルス騒動でした。
多様な世界と愉快に共存するには、どうしたらよいのか。他人事ながら、息子くんの成長がとても楽しみになる本でした。







2 件のコメント:

  1. フレディみかこさんと共にこの本はTVや新聞で度々紹介されているので、読んだような気分になっています。他の著書「女たちのテロル」では、金子文子も取り上げられている様なので読んでみたく、図書館に予約しました。生憎、コロナで図書館が休館中なのでまだ読めずにいます。みかこさんもユニークで強い方とお見受けしました。

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  2. reiさん
    私も、コロナ騒ぎが収束したら、『子どもたちの階級闘争』を図書館で借りて読んでみようかとも思っていますが、そちらは読まなくてももうわかっている感じもします(笑)。
    そうそう、ブレイディみかこさんは文がうまい!気取ってない!洞察力がある、肝が据わっている、爽快な方だと思います。でも配偶者さんも面白い、子どものときなりたかったからと、銀行員からダンプトラックの運転手さんになるなんて、面白すぎます。
    本は、いろいろ出されているようでした。

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