じつは、酔狂にも上着も持っているのです。膝下くらいまである長い上着なのです。
ヤオの衣装の中心は、何といっても刺繍したパンツです。上着もパンツをどう美しく見せるかという小道具にすぎません。
そして、前身ごろと後ろ身ごろには深いスリットが入っていて、スリットの終わりに房がぶら下がっていますが、片方はなくなっています。
40センチ幅に細く織った布をはぎ合わせたり、脇や裾を縫うのにはミシンを使っていますから、完全な普段着だったのでしょう。
破れを3か所ほど、大きく継ぎあてしてあります。
どれも裏を見ると破れはきれいに始末しないで、そのままになっています。着続けるために修理したのではないのでしょう。
たぶん、着古して、破れて捨てようと思っていたものが、チェンマイの民族衣装を扱っているお店に持って行けばお金になると知り、適当に繕って持ち込んだに違いありません。
タイ人の友人がチェンマイで民族衣装の店を出していましたが、店を開ける前からたくさんの山地民の人たちが衣装や道具などを持って待ち構えていました。
何でも買ってあげればいいのに、友人は容赦なく査定して、
「そんなものは要らない」
と平気で言ってました。
さて、ヤオのパンツははくために手に入れたもので、愛用しましたが、いくらなんでもこの上着を着る勇気は、はなからありません。引き出しの中で、無駄に場所を取っているだけです。
でも、嬉しいのは貴重な文化遺産を分捕ったりしたのではないこと、捨てようと思っていたものを手に入れることができたことです。
袖口は、機械織りの布を細くパッチワークした先に、紐に金属のコイルを切ったものを通して縫いつけています。
こんなところが、民族衣装の面白いところです。
赤い襟飾りが気になっていたので、ちょうどよかった!この毛糸はウールですか?どうやって長い帯状にしてあるんだろう?
返信削除これだけ着古していたら罪悪感なくていいですね!以前美術館の企画展「貝の道」で見た、アフリカやアジアの貝をあしらった神事に使うものとか、どうやって手に入れたのかとても気になりましたから。
hiyocoさん
返信削除ウールっぽいけれど、きっとアクリルが入っているでしょうね。
タイは熱帯ですから、当たり前ですけれど普通は毛糸なんか売っていません。でも手づくりというより市販糸のようなので、特別のルートがあったのでしょう、面白いですね。
あの人たち、発酵茶と手織りの袋を交換するとか、山と里でいろいろな商売をしているので、北の町にきっと山地民御用達の店があったに違いありません。
もふもふはとっても密によくできていて、ちょっと見てみましたがどうやって作ったかわかりません(笑)。何本かずつ、布にとじつけ、後で切りそろえたのかもしれません。
そうそう、文化財みたいなものを「くれくれ」というのは私は抵抗があります。どこにでもあって誰もが持っていて、でも要らなくなったものが嬉しいです。
カンボジアにいたとき、刃物や籠は、よく新しいものを買って使い古したものと交換してもらいました(笑)。