もう1冊、秋山あゆ子さんの絵本ではない、秋山亜由子さん(同一人物)の漫画、『虫けら様』(青林工藝舎、2002年)を紹介します。
虫に「けら」というさげすむ言葉と、「様」という敬う言葉が同時についているところが、虫と作者の距離を表しているようです。
約200ページに、長短16話が収録されています。
カバーの表紙裏の絵 |
この漫画を読むと、漫画を描く「ヒト」とは何か、漫画を読む「ヒト」とは何か、考えこまずには、いられなくなります。
それほど、命の短い虫の世界が生き生きと描かれています。
絵本の『くものすおやぶんとりものちょう』と違って、漫画では虫たちが擬人化されているときは、手が2本と脚が2本だけ描かれています。
これは「稲虫」というお話です。
稲が実るころ、人間からは害虫と呼ばれているウンカが来て、
ツマグロヨコバイ、ゾウムシ、カメムシ、コブノメイ蛾とどんどん稲の害虫がきて、
とどめを刺すように、実った米を食い荒らすイナゴが来ます。
それを、見知らぬ子ども(実際は子守りグモの子ども)と一緒に見ていた村の少年が、今年の稲は全滅かと絶望を感じていると、害虫たちの天敵である子守りグモがやってきて、稲の全滅が免れるというお話です。
かつて、農薬を使わない頃、田んぼにはこんな力関係が出来上がっていました。今では、人間から見た害虫と同時に益虫も農薬で失われてしまっています。
セミの話、ハチの話、どちらかと言えば哀しい話が続きます。
虫だけの話より、虫と人間の関係の話の方が多いでしょうか。そういえば、虫が出てこないでネズミが出てくる話もあります。
虫好きでない人も楽しめる素敵な漫画ですが、どんな人が読むのでしょう?
かつて漫画を読むのは、基本子どもだけでしたが、今どき漫画を読むのは、基本大人だけなのかもしれないと思ったことでした。
この絵もお話も、子供は怖いでしょうね。
返信削除羽化できなかったセミの子供は悲しいですね。地中にはそんな幼虫がたくさんいるってこですね。
hiyocoさん
返信削除虫好きの子どもなら、とても喜ぶと思いますが、今どきも虫好きの子どもは、一定数いるのでしょうね。
中に、「貝殻天使」という、貝殻の絵がいっぱい出てくる話もありましたよ(^^♪
羽化できないセミの話は悲しいです。我が家の庭にはたくさんのセミの穴があって、抜け殻もいっぱい、地中にたくさん住んでいることは確かですが、作業棟の床のコンクリートを打つときは、出られなくなるセミの子がいるんじゃないかと、本気で心配しました。垂直に出ようとして障害物があったら曲がるという研究結果があればよかったのですけどね(笑)。
ただ、東京のような出る場所が限られている(実際は公演がいっぱいあるかな?)場所でもセミがいるので、何とかなったと思いたいのですが。