織物にはいろいろな織り方があります。
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経糸緯糸が均等な平織り |
一番シンプルなのは、経糸を1本おきに代わりばんこに上下させ、緯糸(たていとよこいと)を経糸と同じくらいの密度でさして織る「平織り」です。
平織りは、例えば糸より硬い竹など織った場合を想像するとよくわかりますが、隙間がたくさん開いて、涼しい布ができます。浴衣地や夏服には平織りがぴったりというわけです。
そして、冬に着るオーバーコートなどは、風を通しにくくするために、もっと目が詰んで隙間の少ない綾織りなどにします。
平織りでも、経糸、あるいは緯糸のどちらかを密にして織ると、目が詰んで布も厚くなります。
私が参加させていただいているKさんの織物教室では、扱う糸が羊毛ですから、ただの平織りより、経糸を密にして、布を厚くして保温性を高くすると同時に、経糸で模様もつくるという織り方が主になっているようです。
さて、帯(バンド)は、いろいろな地域で織られていますが、ほとんどは経糸で模様をつくる、経糸が密なものです。
また、キリムなど敷物や、かつては壁にかけて寒さを軽減したタペストリーなどは、緯糸で模様をつくる綴れ織り(つづれおり)で織られているものが多くあります。こちらは緯糸が密です。
織物には、さらに、経糸緯糸は均等に織りながらも、その上に緯糸で模様を出す
紋織り、経糸に緯糸を結びつけて切りそろえる
緞通などなど、さまざまな織り方があります。
そんな中、経糸で模様をつくる帯を見てみます。
左はネパールの帯、真ん中と右はメキシコの帯で、左右の帯が経糸で模様をつくったもの、真ん中は緯糸で模様をつくった帯です。
ネパールの帯の同じところの、表と裏です。経糸を1本おきに色を変えているので、経糸が緯糸の上になったとき目立つ、つまり裏表で色がまったく反対に見えます。
緯糸は見えません。また、経糸が「ノの字」あるいは「逆さノの字」に見えるところと、「ハの字」に見えるところがあるのがわかります。そして、真ん中部分に比べて両端の目が詰んでいます。経糸を1本おきにして単純に織り進めただけでなく、結構複雑な織り方をしているのでしょう。
メキシコの帯の、同じところの表と裏です。表では狐のような動物が見えますが、裏では動物とは見えません。
ネパールの帯が7色使っているのに比べて、メキシコの帯はたった2色ですが、なかなか鮮やかに見えます。それは、赤糸より白糸を太くする、端の線模様は白糸を1本どりで使っているのに、中心部の模様は2本どりにしてさらに太くするなどの工夫をしているからです。
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メキシコのバンド織り |
メキシコでは、模様はその都度、
刀杼(とうじょ。杼と筬の両方の働きをする)で経糸をすくってつくります。
こちらは、女性が頭に何か乗せている(または生命の木のような?)模様の表と裏です。
ネパールでも、見たわけではないので確かではありませんがメキシコ同様、自分の身体の重さを使って経糸を張る、バックストラップという方法で織られていると思われます。
北欧の各地には、板の穴と隙間に1本ずつ経糸を通して、この板を上下させながら帯を織る
バンド織り機があります。
手芸用品、おもにはボビンレース用品を扱っている
ミラベルカというネットショップでは、北欧スタイルの、模様織りもできるバンド織り機を、今でも扱っています。
また、バンド織りの写真ばかりを集めた、
興味深いサイトもあります。
真ん中のメキシコの帯は、帯としては珍しく、緯糸だけが見える、キリムなどと同じ綴れ織りという技法で織ってあります。
綴れ織りは、裏表まったく同じ模様になるし、時間はかかりますが技術はさして要りません。しかし、経糸がとても少ないのが見て取れます。
帯というものは、結ぶときに常に縦方向に引っ張るものですから、これでは帯としては弱いのです。実際、私はこれと同じ(色や模様は違ったけれど)帯を愛用していましたが、経糸が切れてしまい、これはその後手に入れたもので、扱いに気をつけていました。
もっとも、綴れ織りのキリムやタペストリーの経糸には、強くて伸縮性の少ない、しっかりした麻糸を使っているので長持ちします。