2022年2月4日金曜日

スピン


1996年に発行された『本を書く』(アニー・ディラード著、柳沢由美子訳)が、今年早々に文庫本(ポケットスタンダード)化されたと、訳者の柳沢さんがくださいました。
文庫でハードカバーは珍しく、美しい本だなと読んでいて、しばらくしてスピンがついているのを見つけました。スピンとは、本についている紐状の栞です。


本についている栞をスピンと呼ぶと知ったのは、『ビブリア古書堂の事件手帖(3)』(三上延著、メディアワークス文庫2012年)でした。
『ビブリア古書堂の事件手帖』の中の一話で、当時、スピンがついていた文庫本は新潮文庫だけだったので、スピンが事件解決の糸口になるのです。そして、そのメディアワークスの文庫本そのものには、スピンはついていません。
あとがきには、2011年に創設された星海社文庫にもスピンがつけられているので、今ではスピンのついた文庫本は新潮文庫だけでないと書かれています。そして、このたび創刊された田畑書店のポケットスタンダードシリーズにもスピンがついているというわけです。


かつては、ちょっとした本ならたいていスピンがついていました。しかし、だんだん本づくりが簡素化され、コスト削減のためか、スピンが見られなくなりました。
ゲド戦記』を例にとると、ハードカバーとソフトカバーが同時に売られていた時代もありましたが、今でも残っているのはスピンのついていないソフトカバーだけです。


上の写真はどちらも作品社の本ですが、時代の古い『パレスチナへ帰る』は、ページ数が少ないにもかかわらずスピンがついていて、450ページもある『見ることの塩』にはスピンがついていません。


そんな中、宇江佐真理の単行本は、文芸春秋社であろうと集英社であろうと2000年代になってもスピンがついていて、重宝しました。文芸春秋社でも、文春文庫にはもちろんスピンはついていません。
私は夜寝る前に本を読むので、スピンがあれば栞になるものを手当たり次第に探さないでいいので、とても助かります。

さて、出版社を知るために『本を書く』のオリジナルをAmazonでさがしてみたのですが、なんと絶版で中古しかなくて、14,991円+送料でした。
「どひゃー!」



 

6 件のコメント:

  1. こんにちは。
    あの紐をスピンというのは初めて知りました。
    我が家の文庫本を調べてみたら、確かに新潮文庫にしか紐がありません。
    ちなみに僕が持っている新潮文庫は、杉浦日向子さん、アンデルセンさん、岡嶋二人さんなどでした。

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  2. かねぽんさん
    新潮文庫にしかついてないことは前から知っていましたが、私も名前は栞だと思っていました。
    アンデルセンさんって、あのアンデルセンさん?泊めた人がお姫様かどうか、何十枚も重ねた布団の下に豆を一粒入れておいて、次の朝寝心地がどうだったか訊いたら、「硬いものが当たってよく寝られなかった」と言ったので本当のお姫様だったという話が好きです(笑)。
    うちにも、杉浦日向子ありますよ(^^♪ほかに村岡花子(じゃないモンゴメリーか)、葉室麟、ばかばかしい森見登美彦などもあります(笑)。

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  3. 私もあの栞紐をスピンと呼ぶのを初めて知りました。フィギュアスケートの回転技で聴き慣れていましたが、語源は?と調べてみました。
    あの紐をスピンと呼ぶのは日本独自(英語はブックマーク)の和製英語との事でした。
    語源ははっきりしない様ですが、「本の背」「背骨」スパインを栞紐と勘違いしたのではないかとの説があります。
    「新潮文庫」の特許かと思っていた人もいて。

    栞はいくらでも持っているのに、取りに行くのが面倒で、近くにあるメモ紙などで済ませる事、あるあるですよね。読んでいる本にスピンを見つけると嬉しくなります。嘗ての本には当たり前の様に付いていたのに。

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  4. reiさん
    和製英語というより、スパインから来た業界の通称だったのかもしれませんね。
    スピンがなくなってから、文庫には必ず本屋さんがレジのところに積んでいた栞をつけてくれていた気がしますが、あまり本屋さんで本を買わなくなったので、今はどうなっているかわかりません。
    私も、栞はなかなか手元に残らなくて、レシートや、本に挟まっている広告の紙、その本の帯、ひどいときはそこいらにあったバンドエイドなどはさんでいます(笑)。

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  5. 私が栞代わりに使うのと同じものが、春さんの投稿に並んでいるのを見て笑ってしまいました。
    さすがにバンドエイドは経験が無いですが。

    丁度、知人が論創社から出版した著書「ヒューマニズムとフェミニズムの後に来るもの」を送ってくれたのですが、スピンが付いていました!

    読み始めた土井善晴著「一汁一菜で良いという提案」も新潮文庫なのでスピン付き。
    スピンの有り難さを享受?しています。

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  6. reiさん
    いいですよね、スピン。

    何だろうヒューマニズムとフェミニズムの後に来るものは?俄然気になります!
    一番関心があるのは、資本主義の後に来るものですが、なかなか来ないし、予測も着きません。国家主義や民族主義の後に来るものもなんでしょう?

    「一汁一菜で良いという提案」も面白そうですね。我が家では一菜の時だけもありますが(笑)。

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