長く欲しいと思っていた、SAMISK KULTUR OG FOLKEKUNST(サーミの文化と民芸、J.W Cappelens Forlag、1972年、オスロ)をAmazon USAで見つけて、注文したら10日もしないうちに届きました。
サーミ人は、スカンジナビア半島の北部のラップランドからロシア北部のコラ半島に居住する先住民族です。
元々は狩猟、遊牧民族でした。
移動するサーミはテントを立て、半定住のサーミは丸太でログハウスを建て、大自然の中で暮らしてきました。
サーミは狩猟、遊牧民族ですから、トナカイの毛皮や骨、そして手に入りやすかった木で、生活用具を手づくりしました。
草で巻き編みにした籠もあります。
日本を含む東アジアには、巻き編みの籠は多くはありませんが、世界的に見ると、籠の編み方では、巻き編みが最も広く分布しているかもしれません。
巻き編みの籠がつくられたのは古く、これまで古代遺跡のいくつかで出土しています。カイロ南西部のリビア砂漠にある古代エジプトのファイユーム遺跡で発見された籠の断片は、紀元前5200年のものとされています。また、トルコ南部の、紀元前6250年にはすでに築かれていた世界最古の都市遺跡といわれるチャタル・ヒュユクでは、わらの巻き編みの籠が、宝ものに混じって発見されています。
バンド織り機は、北欧では広く使われていたと思われますが、サーミも使っていたようです。あるいはサーミだけが使っていたのか、そのあたりはわかりません。
曲げわっぱの箱には、スプーンなどとともに、とても小さなバンド織り機が入っています。携帯用に小さいものをつくったのか、あるいは子どもの練習用なのかままごと道具か、スプーンと比べてみると、その小ささがわかります。
バンド織り機と一緒にあるのは、織るときにしっかり締めるための刀杼(とうじょ、杼と筬の両方の働きをする)です。
トナカイの骨でつくられたものか、細かい模様が施されています。
こちらは、漁網を編む網針(あばり)でしょうか。
漁具と言えば、白樺の浮きと白樺の錘がついている漁網が載っていました。
浮きは白樺の皮だけでなく、木の浮きも使っていたようです。
そして錘は、白樺の皮に包まず、石をそのまま使ったものもあったようです。
トナカイをつないでおくためのロープなどは、麻を栽培する定住民との交換で手に入れたものでしょうか。他にも羊毛とか、木や骨を細工するナイフなどは、定住民から手に入れたものと思われます。
サーミの鍛冶屋さんもいたようですが。
これも、前の写真と同じくロープのジョイントです。
17世紀にはじまった国民国家体制の浸透によって、サーミたちは複数国家に分断されました。そして、第二次世界大戦後に、ものや情報のグローバル化によって、狩猟、遊牧生活をおくることがだんだん困難になったとはいえ、この本が発売された1970年代には、まだまだ伝統的な生活様式が、そこここに残っていたことでしょう。
しかし、1986年のチェルノブイリの原発事故で、サーミがそれまでの生活を送ることは、決定的に困難になりました。
というのは、サーミの食料であったトナカイは、苔やきのこを好んで食べる動物ですが、コケやきのこには放射能が溜まりやすく、サーミたちは生活をトナカイに頼ることができなくなったのです。
今では、ほとんどのサーミが定住してしまっています。
今では、ほとんどのサーミが定住してしまっています。
トナカイの骨で作った道具は装飾が施されて素敵ですね。
返信削除白樺で包んだ錘が載っていましたね!漁師のお父さんがハンサム過ぎる(笑)。
hiyocoさん
返信削除細かい彫刻が素晴らしいです。この本には骨や木の美しい彫刻がいっぱい載っているのですが、そちらがメインとも言えるのですが、私はどうもロープとか錘とかに惹かれてしまう癖があって(笑)。素敵な線画も載せればよかったですね。
このお父さんだけでなく、みんなハンサムです。海の荒くれ男というより、詩人や哲学者といった感じでしょうか(^^♪