2022年5月11日水曜日

白樺の錘


北欧の漁網の錘(おもり)です。
以前、スウェーデンの白樺の浮きを商っていた骨董商のKさんが、白樺の木の皮に、小石を包んだ錘を売り出していました。
「これが、例の錘か」
大いに心惹かれましたが生活不必需品。欲しいかどうか一晩考えて、もしまだ売れてなかったら買うことにしました。大きいのだけ買おうと思っていましたが、小さい方の方がどちらかと言えば伝統的な形、捨てがたいものでした。
次の日、Kさんに連絡してみると売れてないとのこと、二つともいただいてしまいました。



大きい錘は、幅が11.5センチほど、糸で綴っています。



そして、小さい方の錘は、白樺の皮で綴ってあります。


小さい錘を横から見ると、中に包んだ小石が見えています。
上の「わ」に紐を通すに違いありません。


白樺の皮の錘は、中身が小石ですから、一つ一つはそう重くありません。漁網の裾にたくさん吊り下げて使いました。

「ムーミン・パパの灯台守」より

トーベ・ヤンソン(1914-2001年)+ラルス・ヤンソン(1926-2000年)のムーミン・コミックス『黄金のしっぽ』(富原眞弓訳、筑摩書房、2000年)には、白樺の浮きと白樺の錘をつけた漁網を持って、ムーミンとスノークのお嬢さんが魚を獲りに行く場面があります。

Kさんは、白樺の錘が見られるのは、北欧といってもスウェーデンとフィンランドだけだとおっしゃっています。
ヤンソン姉弟の父はスウェーデン系フィンランド人、母はスウェーデン人で、留学先のパリで出会って結婚しましたが、戦争が激しくなって、フィンランドに帰りました。フィンランドでは、フィンランド語とスウェーデン語を公用語としていて、当時、フィンランドでスウェーデン語を母語とする人は10%ほどでした(今では5%ほど)。フィンランドで育ったヤンソン姉弟は、スウェーデン語を母語として育ちましたが、少数派でした。
フィンランドで、スウェーデン語を母語とする人たちだけが白樺の錘や浮きを使っていたのか、あるいは広く使われていたのか知りませんが、ヤンソン姉弟は、この白樺の浮きと錘を実際に使っているのを見たことがあるに違いありません。


写真の中の白樺細工はすべて北欧のもの、というわけではありません。筒型の浮きたちはロシアや北朝鮮から日本の浜に流れついたものです。ユーラシア大陸の西と東で白樺の浮きが使われていましたが、白樺の錘はどうでしょう?
もしかして、ロシアや北朝鮮で白樺の錘も使われていたとしても、錘ですから潮流に乗って日本の浜に流れつくことはないのかもしれません。

曲木の箱(スウェーデン製)の中に入っているのは、北海道の浜でのらさんが拾った浮き、外に並べた筒型の浮きは、若狭の浜で、自分で拾ったりShigeさんにいただいたりしたもの、編んであるのはスウェーデンの浮き、そして錘です。
今でも日本の浜に流れつく白樺の浮きですが、ロシアや北朝鮮では、今でも白樺の浮きが使われているのか、それとも使われていないのかは不明です。というのも、白樺の皮は丈夫で、波に流されても長く劣化しないからです。
また、スウェーデンやフィンランドで白樺の浮きや錘が使われていたのは、ずっと昔のことのようです。


ちなみに、日本の浮きは木でつくられ、錘はでつくられました。






 

2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

白樺を浮きにも錘にも使う知恵が素晴らしいですね!

さんのコメント...

hiyocoさん
すごいですね。竹や木は、真水より塩水の方が朽ちにくいかとも思いますが、朽ちてしまいます。でも白樺の皮はそれだけ強いのでしょうね。
サハリンのあたりに白樺の浮きや錘を持って行って、「こんなの使ってました?」と訊いてみたいです(笑)。