4月に、孫のはなちゃんが中学生になるタイミングで、息子一家が越してきました。
住む家がまだ完成してないので、一家は、古いプレハブの仮設ゲストハウスに寝起きして、作業棟の2階の洗面所で顔を洗ったり、母屋で宿題をしたりしています。
作業棟の2階にも眠ることのできる部屋があるのですが、吊り戸のガラス窓の下など、あちこちに隙間があるため、カマドウマやゴキブリが自由に出入りし、室内で我がもの顔に暮らしているので、はなちゃんとはなちゃんの母は、それらを見つけるたびに大騒ぎをしていて、古い仮設ゲストハウスの方がまだましなようです。
4月の、まだ中学校へ行き始めて間もないころ、はなちゃんから読書の課題が出たのに本を東京から持って来てないから、何かおもしろい本を持っていないかと訊かれました。
『精霊の守り人』と『大きな森の小さな家』を勧めたのですが、漫画は読んでも(いまどきの子どもは漫画も読まないらしい)あまり物語を読む習慣のなかったはなちゃんは、『大きな森の小さな家』の方をちょっと読んだけで、そのままになっていました。
先日、また読書の課題が出たのか、両親と本屋に行って、江戸川乱歩の『少年探偵団』を買ってもらってきました。
その『少年探偵団』を買ってきた日、太宰治の『人間失格』も読んでみたいと、はなちゃんが父親に話していました。
「何で『人間失格』?『人間失格』より、『走れメロス』の方が面白いだろう?」
と、これまた、読書はあまりしない次男が、そんなことを言っています。
「おばあちゃんが『人間失格』は持っているから、それを読んでみたら?」
と声をかけると、
「見せて、見せて」
とせかされて、本棚の裏に入れていた太宰治全集を引っ張り出してきました。
太宰治全集は、お小遣いをためて学生時代に神保町の古書店で買ったもの、学生時代にも読みましたが、ガーナに持って行ったので、全巻、隅から隅まで読んだものです。
ガーナのクマシは、当時は町にレストランは、レバノン人がやっている店が1軒だけしかないようなところだったので、週に1度くらい市場に行くだけ、ほぼ家にいる状態だったので、持って行った本は、全部読みました。
太宰治全集のほかには、高校時代に買った福田恒存訳のシエクスピアの戯曲などを持って行っていて、自分が持って行った本を読み尽すと、60年安保世代の夫が持っていた、毛沢東の『矛盾論』や『実践論』、そして『トロツキーの生涯』や『エンクルマの自伝』など、ガーナに行かなければ読むこともなかったであろう本まで、手あたり次第読んだものでした。
それにしても、こんなに重い全集を神田で買って家まで持って帰ったことにも、段ボール箱などなくて、荷物を送ることがたいへんだったガーナにまで持って行ったことにも、我ながら驚いてしまいます。
「ダメ、漢字が読めない」
はなちゃんは、すぐに本を返してよこしました。
そうか、この本は、旧仮名遣いで書かれていたのです。
私は旧仮名遣いを習ったことはありませんが、書くことはできなくても読むことはできます。小さいころ家にあった本が、戦死した叔父の遺した旧仮名遣いのものばかりで、ほかに読むものがあまりなかったからでしょうか。
これを機に、全集を取り出して埃を払ってみると、「太宰治研究」まであるのに、第2巻から12巻までで、第1巻が失われています。揃えて置いてないということは、本棚ができて本を置いたときから、すでに見えなかったものと思われます。
奥付を見ると、筑摩書房から昭和31年(1956年)に発行されたものでした。
引っ越しでは、大きくてどこにも紛れ込みそうにないものがいくつか失われています。
あかずきんです
返信削除1956年生まれです
年月の早いこと、笑
私でもどうにかこうにかしか読めません(笑)。読めるけど、全然文章が頭に入って来なくて、一文を3回ぐらい読まないと理解できませんでした。
返信削除やっと仮設ゲストハウスがどんなものか見ることができました。四畳半で親子3人はなかなかの狭さですね(笑)。でも畳で快適そう!仮設ゲストハウスと母屋建設は同時進行だったのですね。
あかずきんさん
返信削除あらぁ、『太宰治全集』発刊の年、桑田佳祐、世良公則、佐野元春、char、野口五郎と同級生、あかずきんさんも今年ロックンロールですね!(笑)。
月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり、本当にあっという間です。
hiyocoさん
返信削除人間失格のことですか?長く読んでないのですっかり忘れています(笑)。
仮設ゲストハウスは、一人暮らしになった母が喜んでくるのではないかとつくったものでした。でも、1週間もいないのに、「家が心配だし、電話もかかってくるだろうから帰る」と言って帰って以来、長期滞在したことはありませんでした。
仮設ビニールハウスは建設に2カ月くらいかかり、ゲストハウスは1カ月くらいで完成したと思います。母屋に比べたら簡単なものでした(笑)。