北アフリカのチュニジアの土人形です。
おっとりした、優しいお顔、私はその存在をまったく知りませんでした。
土人形を譲ってくれた骨董商のKさんは、知らないに違いないと、『世界の民芸玩具(日本玩具博物館コレクション』(尾崎織女著、大福書林、2020年)という、チュニジアの土人形が掲載された本をつけてくれました。
日本玩具博物館のチュニジアの土人形、1990年頃のもの |
『世界の民芸玩具』の著者の尾崎織女さんは兵庫県にある、郷土玩具の所蔵では日本一の、日本玩具博物館の学芸員の方です。
この本で紹介されている56種類すべての玩具について、(日本で手に入れられたものらしいのですが)現地の空気が伝わってくるような説明文がついていて、とても楽しめる本でした。
この土人形は、チュニジア北部の小さな村、セジュナンに住む先住民の「アマジグ(ベルベル人の自称、ベルベル人がアマジグと自称していることも知らなかった)」の女性たちによってつくられてきました。アマジグ人はチュニジアだけでなく、北アフリカ各地に居住しています。
セジュナン村の女性たちは、涸れた川から粘土を採ってきて、水を加えて足で練り、生地を強くするために砕いたレンガの粉を混ぜて土をつくります。手びねりで成形したあと、数日間乾燥させ、白い粘土で下塗りして、その上に黄土を塗ったり、ウルシ科の常緑低木の葉の汁を棒の先につけたもので模様を描いたりして、焼成します。すると、葉の汁の色が黒く変化するのだそうです。セジュナン村の女性たちは食器や貯蔵容器もつくっていますが、特別な道具は一切使わず、焼成は家畜の糞でつくった平炉を使っています。
セジュナンの技術は紀元前3500年頃とほとんど変わらないとの報告もあるそうです。
写真2葉は、日本玩具博物館のHPより。1990年代のもの |
『世界の民芸玩具』の巻末に、日本玩具博物館の井上重義館長が「日本玩具博物館と世界の民芸玩具コレクション」という一文を載せています。
それによると、日本玩具博物館が世界の玩具の収集を始めたのは1977年からで、国連の国際児童年にあたる1979年に開催した「世界の玩具展」を契機に、本格的に世界各国の玩具収集に取り組みました。
当時、東京にはアジア、中南米、アフリカなどの民芸品を扱う専門業者が多数いたので、彼らの協力でたくさんのものを集めることができましたが、2000年頃から業者の多くが廃業して、民芸玩具の入手は困難になったそうです。
さて、ネットでチュニジアの土人形を検索してみると、日本語では日本玩具博物館の所蔵品の記事以外は数えるほど、ではと英語で検索してみたら、いろいろ見つかりました。
サングラス姿の男性。
赤ちゃんを抱っこしたお母さん。
かっこいい人。
どれも素敵ですが、私は、私の手元にきた土人形が一番気に入っています。
セジュナンの焼きものは、2018年にユネスコの無形文化遺産に指定されていますが、この切手は2018年発行のものなので、無形文化遺産指定を記念しての切手と思われます。
『世界の民芸玩具』より |
上は、モロッコ北部のリーフ地方に住むアマジグの女性たちのつくったラクダと鳥です。セジュナン村以外でも、焼きものをつくっているアマジグの人がいる、やはり身の回りのものだけを使って作っているそうです。
最後に、写真家、野町一嘉さんの『SAHARA』(講談社、1996年)から、ベルベル人(アマジグ人)の若いお母さんの写真です。顔(手も?)にはヘナで装飾しています。そして、土人形と同じ民族衣装を着ています。
土人形には何か塗ってあるのですか?テカテカしてますね。
返信削除北アフリカと聞いててっきりアラブ系の派手な顔をイメージしていたので、最後のお母さんの顔が全然違ってびっくりしました。
hiyocoさん
返信削除白い粘土を塗るとありますが、これが釉薬になり、黄土を塗ったところも赤い釉薬になっているんだと思います。
平炉で焼くとありますから、たぶん1000度以下、楽焼のような感じになって、こすったりされることには弱いけれど、てかてかに光った感じになっているのでしょう。
ベルベルの女性の顔の写真、おとなしすぎた?もっと派手な人を載せればよかったかな?(笑)みんな造作が大きくて、超美人さんばかりですよね。