福音館書店のメールマガジンに、2023年6月の新刊本が載っていました。
その中に、月刊の「たくさんのふしぎ」の中の6冊が「傑作集」として、また『エルマーのぼうけん』シリーズが「限定」で復刻されるとありました。
復刻される「たくさんのふしぎ」の中には、『わたしのスカート』もありました。
「どうしようかなぁ?」
しばらく迷ったのは、絶版になっていた『わたしのスカート』が欲しくて、旧知の著者の安井さんがラオスから一時帰国されていたときに連絡して、1冊送っていただいて、すでに持っていたからです。でも、「限定」ですから、発行部数も多くないかもしれない。いつまた品切れになるかもわからない。結局、『わたしのスカート』の「傑作集」も1冊買ってしまいました。
もう1冊買ったのは、『トルコのゼーラおばあさん、メッカへ行く』(新藤悦子文、福音館書店、牡丹靖佳絵、2007年発行)です。
新藤悦子さんの書かれた『ギョレメ村でじゅうたんを織る』(新藤悦子写真・文、西山晶絵、1993年)が好きだったから、メッカに行くおばあさんのお話も読んでみたいと思いました。
新藤さんは、1997年にゼーラおばあさんと知り合っています。
1999年には、新藤さんがトルコから帰国した直後に、トルコは大地震に見舞われます。それからもしげしげとトルコに通う新藤さんは、2005年に行ったとき、信仰心の厚い、しかし村からもほとんど出たことのないゼーラおばあさんが、メッカに巡礼に行ったことを知ります。
サウジアラビア政府は、人口1000人あたり1人と、各国に巡礼の人数を割り当てていて、トルコでも希望者の中から決まった人数だけにしか巡礼を許可しません。ゼーラおばあさんは、初めて応募したにもかかわらず、運よく抽選に当たり、同じ県の30人が一つのグループになって、飛行機でメッカに行き、メッカに1か月も滞在したのです。グループには1人ずつ、イスラーム指導者であるホジャがつきそうので、心配もなく、1カ月間お祈り三昧の日々を送りました。
巡礼の費用をねん出するために、牛を2頭売り、貯金も降ろしたそうです。
『トルコのゼーラおばあさん、メッカへ行く』の牡丹さんの絵はとてもきれいですが、装飾的過ぎて、私の好きなちまちました情報量は少なかったのが、ちょっとだけ残念でした。
それにしても、こんなに字の多い絵本、いったいどんな年齢層をターゲットにしているのかと、いつも不思議に思います。
と言って、いい年をした私は「たくさんのふしぎ」に大いに恩恵を受けているのですが。
さて、『ギョレメ村でじゅうたんを織る』は、新藤さんの写真と西山さんの絵で構成されていて、情報がいっぱいあります。
西山晶さんは、『わたしのスカート』や『ズボンとスカート』でもおなじみ、遠い外国のお話なのに、素敵な絵を描かれます。
店から買って来た糸を2本撚りにして太くしている写真と絵を見ると、撚りはこうやっても掛けられるのかと、新鮮です。
泉で洗った糸に、庭先で撚りをかけていると、近所の女の人や子どもたちが、刺繍や編みものを持って集まってきて、糸車ばた会議のようになりました。
ちょうど断食月だったので、水も飲まずに畑仕事をするのはきついのか、糸車を回す日がすっかり多くなったそうです。絵の壁にもたれた2人は、お腹がすきすぎて何もする気力がないようです。
いつもはじゅうたんの糸を化学染料で染めているハリメさんは、新藤さんの希望で、生まれて初めて草木染めをします。
最初だけ、糸杉の葉とトマトの葉で緑に染めようとして、茶色に染まって失敗しますが、あとはタマネギの皮、ぶどうの蔓、アカネ、クルミの皮、アーモンドの葉など、家の回りから集めた材料だけで、次々と欲しい色に見事に染めます。
じゅうたんの模様は、新藤さんとハリメさんの二人で考えました。
そして、ハリメさんと新藤さんだけでなく、ハリメさんの娘さんたちも織るのを手伝います。経糸(たていと)に結びつけて切った緯糸(よこいと)を叩いて締めるには、鉄製の櫛のキルキットが使われています。書いてはありませんが、別のお店で買った経糸と緯糸、経糸はたぶん麻(木綿もあり)で、色の良く染まった緯糸はウールのようです。
『ギョレメ村でじゅうたんを織る』には、織りものだけでなく、食事、学校、畑などの風景や、結婚式、割礼式、犠牲祭などの写真や絵もあって、楽しめます。
3か月ほどでじゅうたんは織りあがりました。
ハリメさんと新藤さんで模様を考え、ハリメさんと新藤さん(3分の1)が織ったじゅうたん、素適です。
『ギョレメ村でじゅうたんを織る』は、じゅうたんを織ることを通してギョレメ村に滞在し、村の四季を描く物語でもありました。
この本の売り上げの一部は、今年の2月に発生したトルコ南東部の大地震の支援金として、トルコ大使館に寄付されます。
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