2023年6月4日日曜日

セルロイド人形の故郷

TBSラジオで毎週金曜日に放送されている「ラジオTOKYOえんがわ」の、2時台に、TBSラジオでかつて放送された番組を再放送する、「ラジオTOKYOリメイク」というプログラムがあります。歌番組や生放送など、懐かしい放送のさわりを聞かせます。

2023年6月2日の「ラジオTOKYOリメイク」は、1955年(昭和30年)の5月5日、子どもの日に放送された「のびゆく子どもたち」でした。
「のびゆく子どもたち」は、サラリーマンの子ども、国立大学付属学校に通う子ども、浅草の子ども、製本の町で働く子どもたちなど、さまざまな境遇の子どもたちへのインタビュー番組だったとのこと、「ラジオTOKYOリメイク」では、「町工場で働く子ども」のインタビューが再放送されました。
以下、そのインタビューです。


東京都葛飾区の、荒川放水路に近い町工場のほとんどは、セルロイドの人形をつくる工場です。
セルロイド工場ではたくさんの子どもたちが働いているというより、子どもを安く使うことでようやく町工場が成り立っているという感じです。
セルロイド工場ではプレス、組み合わせ、色つけ、箱詰めと、狭い工場で子どもたちは大人たちに混じって働きます。
インタビューに応じた中学3年生の男の子は、日曜日には朝7時から夜7時まで10時間働くとのこと、1時間15円なので、1日働いて150円になります。
この時代、銭湯が15円、かけそばが25円でした。

彼だけでなく他の子どもたちにも共通した悩みは、狭い職場で一緒に働く大人たちが、子どもに聞かせられないような話をいつも無遠慮にしていることです。聞きたくないのですが、大人に注意するとその後働きにくくなるだろうからと、何も言えないとのことでした。


このインタビューは1955年5月に行われています。
1955年といえば、アメリカのセルロイド輸入禁止のあおりを受けて、セルロイドのキューピーの製造が中止された年で、ほかのセルロイド製品も例外ではなく、製造が中止されたり縮小されたと思われます。


家計を助けるために働いていた子どもたちも、子どもたちからひんしゅくを買っていた大人たちも、そのあおりを受けたに違いありません。

1973年、インタビューから18年後に、国際労働機関(ILO)が「就業が認められるための最低年齢に関する条約」を定め、15歳以下の産業に関する就業が禁止されました。
1955年はわずか68年前ですが、食べるために精一杯働いた子どもたちの手によってセルロイド人形ができたと思うと、切なくなってしまいます。








4 件のコメント:

  1. ラジオ番組も録音して残っているんですね!
    放送内容を読んでから、腕がブランブランしているピンクのクマを見ると、春さんちに来てよかったねーと思ってしまいました。

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  2. hiyocoさん
    まだスマホでラジコで聴くことができるので、聴いてみてください(2時ちょっとすぎ)、働く子どもたちはけなげです。そんな時代でしたね。

    クマさんはもう少し腕をちゃんとして座らせようとやってみたのですが、腕を触っているとすぐ転んでしまって(笑)。やっと座らせたところです。
    赤ちゃん人形なんかはみんな新しいゴムで直してやったのですが、この子たちはそのまま、何故でしょうね?後に立っている犬(?)も、首が転がっらないよう、そっと頭を肩の上に置いています(笑)。

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  3. ラジコ聞きました!明日で差し替えだと思うので、滑り込みセーフです(笑)。
    子供が話しているとは思えなくてびっくり!どう聞いても40代のおじさん?昔の子供たち、特にこの子たちは労働しているからか、とても大人びていました。インタビュアーが結構不躾(苦笑)。何から何まで今の日本では考えられないことです。
    外山アナ、久しぶりでした。ラジオで仕事していたんですね。

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  4. hiyocoさん
    確かに、答え方と言い、声と言い、中学3年生には思えない感じ、他の子たちもそうでしたね。
    私の中三のときの同級生で、勉強ができたのに家の事情で中卒で就職した子も、落ちついていて、年上みたいな感じでした。
    外山アナ、テレビにも出ていたのですか?永六輔さんのお相手をしていたころから、ラジオでしかお耳にかかったことがありません(笑)。

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