プノンペンの、トゥールタンポン市場の骨董屋さんの店先でこれを見たとき、最初はなんだかわかりませんでした。竹の皮を取り除き、外側も、内側も滑らかに磨いた管に、木の先端がついています。
たずねると、「織物の道具」ということは、誰でも知っているのですが、それ以上はあいまいで、しばらくは謎でした。
ある日、これが杼(ひ)とわかったときは、「へ~ぇっ」と、びっくりしたものでした。
緯糸を巻いた管を、このように杼の中にさしこむのでしょうか?
先端の木は、シャトルを飛ばすための大切な頭であると同時に、竹が軽いので、重しの役割も果たしているのかもしれません。
竹ではなく、全部木でできている杼を見つけたときには、もっと驚きました。
細い棒の中をくり抜くなんて、とんでもない大仕事です。しかも、硬そうな木です。
太くて長い方の杼は、先端と彫り口を金属で補強してあります。
別なときに、別なお店で見つけたものです。
なぜ、手間をかけて、木を彫ったりしなくてはならないのでしょうか?
答えは竹のもろさにあるようでした。
経糸(たていと)をくぐって、杼を滑らかに飛ばすため、竹の表面は皮をはいでいますが、そのため割れ易く、あまり長持ちしなかったものと思われます。
骨董屋さんの店先に置いてあるものも、ほとんど割れかけていました。
普通、杼は、右へ左へと代わりばんこに飛ばすため、左右対称形につくられています。
しかし、この杼は、使うときにいちいち向きを変えなくてはなりません。いったい、どんなものを織ったのでしょう?
私は、絹でも細い糸で、スカーフを織るようなときに使ったのではないかと想像します。
もちろん、この杼を実際に使って、織物をしている人に、お目にかかったことはありません。
へぇ〜〜?!
返信削除これも杼なんですか! 珍しい形ですね。
鉛筆みたいだけど、実際の使いごこちはどうなんでしょう。あまり見かけない形、ってことは、さほどよろしくないということでしょうか? どちらにしても貴重なものですね。
sekineさん
返信削除不思議な形でしょう?
どうしてこんなのを使っていたのか。骨董屋では、割とよく見かけました。
いつ頃使っていたものか、どの地方で使っていたものか、まったくわかりません。
昔のものは、文献もないし、今聞き取りをしておかないと、謎のままになってしまいそうです。