2014年6月11日水曜日

アンギン編みの錘


長い間、鳴子とばかり思っていた木片です。
展示室のクモの巣を掃除したついでに埃を払っていたら紐が切れ、それが契機で先日UPしたところ、本田秀生さんから、「それはアンギン編みの錘(おもり)ではないか」とのコメントをいただきました。
ネット検索してみるとまさにその通り、錘好きの私が、
「錘に似てる」
とこれを手に入れたのも、偶然ではなかったのでした。

錘と知ったからには、そのままにしておけません。鳴子なら鳴子なりの、錘なら錘なりの飾り方があります。せっかく選んで通した紐でしたが、抜いてしまいました。


アンギン編みとは、むしろ、こも、俵、すだれなど編む編み方の呼称です。アンギンは「編布」とも書くようで、新潟での呼び方が全国的に広まったのでしょうか、私は全く知りませんでした。
そして、錘はコモツチと呼ぶそうです。

編み方の名前は知りませんでしたが、編み方は知っていました。台木の上に経糸(たていと)を等間隔に、振り分けて垂らしておき、その上に緯糸(よこいと)を置き、台木の前後に垂らした経糸(たていと)を、緯糸を抑えながら反対側に送り、それを繰り返して布をつくるのです。
小さいときには、遊び半分ですが、こもを編ませてもらったこともあります。

布を編むための材料は、苧(からむし)などの草です。
縄文時代の人々は、まだ機(はた)で織る布を知らなかったので、アンギン編みの布をまとっていたことが、住居跡の調査などで分かってきました。経糸がまっすぐ通ってなくて、もじるというか、綯(な)われているのでわかるのです。


できるだけ、アンギン編み機に近い方法で飾りたいと思い、経糸には麻糸を用意しました。
もっと撚りがきつくてもう少し細く、色が茶色っぽい麻が欲しかったのですが、贅沢は言えません。あったものを使います。


まず、麻糸を適当に切って真ん中を、後で解けるように結んでおきます。


アンギン編みで実際に布を織るなら、もっと細い経糸を使い、経糸の長さも長く必要ですが、飾るだけですからこのくらいの長さにします。


縄文の遺跡から出てくる錘は、上下にちょっとへこみをつけた、楕円形の平べったい石です。錘がこの形につくられたのはいったいいつからなのでしょう?
錘の糸は、編み進むにつれて錘から解いて行かなくてはなりませんから、そう長い糸を巻いたとはあまり思えない形です。


実際に編むときは、台木はもちろんまっすぐな木ですが、適当な木がなかったので、ずっと前に拾ってきた流木を利用しました。
こうやって錘を垂らしておき、緯糸を置くたびに、向こう側の錘はこっちに、こっち側の錘は向こうにやって、緯糸を固定します。


アンギン編みの台木には、経糸と経糸の間隔が一定になるよう、切れ目を入れて印にします。
経糸と経糸の間隔は、俵なら約5センチ、すだれだった ら約20センチくらいでしょうか。しかし、布を編むのだったら、間隔は5ミリから1センチほどのものでしょうから、さぞかし編みあげるのに時間がかかったことでしょう。




4 件のコメント:

  1. karat2014年6月11日 17:54


    「むしろ」をどうやって編むかなど、今まで考えたこともありませんでしたが、なるほどね…。こういう錘を使うんですね…。
    といってイマイチ理解不足ですが、何かのサバイバルで役に立つかも…と思いました。

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  2. karatさん
    編みものと織りものって似ているけれど、実は全然違う分野なのですね。現代風に言えば、ニットと布ですが、誰もニットが、布より竹籠や俵に近いなんて思いもしません。
    世界中にいろいろな編みものがあったのは、考えれば面白くて不思議なことです。漁網なんて、編み針もできたものも、世界じゅうそっくりです。
    karatさんはよく編みものをなさいますが、かぎ針と棒針は本当に優れものなのですね。もちろん、編む早さに個人差はあるでしょうけれど、ボビンレースなどに比べると誰でもやってみることができます。
    使い込んだ錘には、何とも言えない味がありますよ。でも、アンギン編みがサバイバルで役立つ状況になったら、もうおしまいですよ(笑)。

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  3. 私には編み物の方がらくです。もちろん毛糸があってのことですが、毛糸一本から始められます…。道具も編み針だけでいいし…。
     織物は経糸横糸それぞれ準備して、特に経糸はあの長いのを絡ませずにぴちっと張るなんてて想像しただけで大変。
    紬だの絣だの、模様を考えて経糸を染めてそれをセット(横糸も)するなんて私には信じられないです。
     イカットとかもすごいと思います。

     でも、同じ面を埋めるのに編み物の方が糸(長さ)を食います。特にかぎ針は糸を食います。何重にも絡むからですが、そのくせ隙間だらけで、身に着けるためにはやはり毛足のある毛糸でないとダメなのでしょうね。それにそれだけ糸を食っても軽いのは毛糸だからでしょうし…。
     裂き織というのがありますが、裂いた布をかぎ針で編むこともあります。でも、大変重くなります。(布が何重にも絡むので)
    裂き布で編んだものは、重いので敷物とか座布団とかにしかならないですね。
    とつらつら考えてしまいました。
     羅針盤とか火薬とか(でしたっけ?)世界三大発明とか社会科で習いましたが、布、糸、針の方が人類の大発明だと思ってます。(^^)

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  4. karatさん
    確かに織りものも編みものも針もすごい発明だと思います。とくに針がすごい!ジャングルで暮していた横井庄一さんが、自分で織り機をつくって布を織って服を仕立てていたと聞いて、「針はどうやってつくったんだろう?」と、それが一番の関心事でした。
    織りものは、機に糸を掛けるまでが大変で、機に掛け終われば、八割がた仕事が終わった感じです。でも編みものはアンギン編みをはじめ準備は大したことがないけれど、編みはじめてからが一針一針で、時間がかかります。私も以前は家族のセーターなど全部編んでいました。ところが、夫のセーターはもう三年越しで突っ込んでいるし、私のマフラーは五年越しくらいになるし、最近は何も完成しません(笑)。かぎ針の四角いモチーフつなぎの、カラフルな膝掛けのようなもの、大好きでつくってみたいのだけれど、どうせ途中で糸が気に入らないとか、色が気に入らないとかで突っ込むことが目に見えていて、怖くてはじめられません(笑)。
    織りものは平織りにすると糸が閉まりきらないので風を通して涼しく、綾織りにするとぴっちりしまって風を遠さなくなります。浴衣地とバーバリーの違いですね。あと、絹はぴっちり織ってあっても、寒い時は暖かく、暑い時は身体から浮くので涼しく、不思議な材質です。やっぱり化繊など、足元にも及ばないですね。

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