長椅子に掛けている布は、ぴちっと直しても、すぐくしゃくしゃになります。
座っただけでもしわになるのに、寝っ転ろがってあっちを向いたりこっちを向いたりする人もいますから、いつもきれいに保つためには、せっせと押し込んだり引っ張ったりしなくてはなりません。
『赤毛のアン』シリーズに、きれいに膨らませて置いたクッションにどかっと座って、ぺちゃんこにしてしまう客の話がよく出てきます。
クッションをつぶされたアンはやきもきして、お客が帰った後で、丁寧に叩いて膨らませています。あの時代、刺繍したきれいなクッションは飾りで、家の人はクッションにもたれないようにしていたのでしょうか?
しかし、長椅子は飾りではないので、座らないようにするわけにはいきません。
さて、洗濯するために覆った布を取り替えているとき、しまってある裂き織りの布を思い出しました。
裂き織りは、古い木綿布を裂いて織ったものです。
重い裂き織りの布を掛けたら、もしかしたら皺くちゃになりにくいかもしれません。
木綿は、インド原産のものやペルー原産のものがありますが、日本ではやっと400年ほど昔の戦国時代に栽培できるようになり普及した、新しい素材です。
三河、駿河などの温暖な地域では、綿が栽培されましたが、寒い地方では育ちません。そのため、寒い地方には船で、古い布(サキオリグサと呼ばれた)が盛んに運ばれたのでした。
着古して、もう布としては使えなくなった木綿布を裂いて、それを緯糸(よこいと)として織って、もう一度利用するのは、先人の知恵でした。
裂き織りは、地機(じばた)で織られ、地域によっては高機(たかばた)でも織られました。
そして、作業着、帯、夜具などとして使われました。
これは布団でしょうか。綿は入っていませんが裏布がついています。
夜具にするためには、どれほどの布が必要か、織り手は熟知していたのでしょう、全体に赤い布がうまく配置してあります。
この藍の部分は、紺絣を裂いたものに違いありません。
紺絣以外には、木綿の着物で絣や模様のものはほとんどなかったのでしょう。模様布はわずかにみられるだけです。
赤い布は少量ですが効果的に使われています。
裏地には紺絣を使い、表地と裏地がずれないよう、糸で何ヶ所も細かく留めてあります。
裏地には、一種類ではなく、いろいろな絣が使われています。細い布をはぎ合わせたところもありますから、これもサキオリグサとして古い着物を購入した中から、比較的傷んでいないものを取り分けて使ったものかもしれません。
籠に入れてしまっているだけより、布は喜んでいるでしょうか。
広げていたときはそう目につきませんでしたが、光の加減か、経糸に黒い糸を使って縞模様になっているのが、目立って見えます。
次の日。
おぉ、まったくしわになっていません。
でも考えてみたら、裂き織りは洗濯が大変です。まめに薄い布をきれいに敷き直すか、分厚い裂き織りの布の洗濯を厭わないか、さて、どっちにしようか、ハムレットのように悩む私です。
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