2014年9月8日月曜日

しかたなく、吉備団子

親戚の冠婚葬祭は、父が存命中は両親に、父が亡くなり母が歩行困難になってからは弟に、お任せしていました。しかし、子どもの頃からかわいがってくれた叔父が亡くなったので、葬儀に参列するために、久々に母の故郷である岡山に行ってきました。弟と一緒でした。

あわただしく、葬儀に参列するだけの旅でしたが、帰りの岡山駅では、お土産を買うために20分ほど余裕を見て新幹線の切符を買いました。
目当てのお土産は、藤戸饅頭です。

藤戸饅頭は薄皮饅頭で、父の生家から2キロほど離れた倉敷市藤戸の藤戸寺門前でで古くからつくられています。
父が小さい頃は一つ十銭だったとか、私が小さい頃は一つ十円でした。父が、父の従弟と二人で、自転車で何分で買って帰ってこられるかを競争した話は、藤戸饅頭を食べるたびに、何度も聞かされたものです。昔の道は全部砂利道でしたから、自転車を飛ばすのは、さぞかし大変だったことでしょう。
父は藤戸饅頭が大好きでしたが、私の弟妹たちもみんな好きです。弟によると、藤戸を知らないどなたにさしあげても喜ばれるそうです。

私より岡山に行くことが多い弟が、
「最近、岡山駅では藤戸饅頭は一ヶ所でしか売っていないよ」
と言います。
「一階だったよね」
到着したときに、ちらっと看板を見かけたのですが、さがしても見当たりません。
「変だね、店の景色が違うよ」
岡山駅は、大都市のどこにでもあるような無国籍な駅になっていて、歩いても歩いても、なかなか店が見つかりません。
「もう時間がないから、諦めよう」
「そうね」
間抜けな私たち二人は、とうとう藤戸饅頭を買うことができず、プラットホームで吉備団子を買って帰途に着きました。


以前、吉備団子は碁盤の目のように組んだ背の低い経木の中に収まって並んでいるものでした。

「ねえ、見て。こんなのがあるのよ」
と五味太郎のデザインのパッケージに入った吉備団子を妹から初めて見せられたのは、二、三年前でしょうか。
吉備団子もいろいろある中で、かわいいので、ついつい目にとまります。


吉備団子を楽しむと言うより、五味太郎の絵を楽しむ感じです。


いつも犬猫がお世話になっている獣医のK先生は、藤戸とは倉敷川をはさんで対岸にある天城の天城中学の卒業生です。
お父上が転勤族で、各地を点々とされたそうですが、このあたりで、岡山県の瀬戸内地方からいらした方をほかには知りません。

帰ったらK医院におうかがいする用事があったので、藤戸饅頭を差し上げたかった。
しかたなく、吉備団子を持って行きました。





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