2015年1月12日月曜日

『食べているのは生きものだ』


古い友人、森枝卓史さんの、『食べているのは生きものだ』(福音館書店、2014年)という絵本を書きました。
人も含めた動物は、他の生物の命をいただくことのみで生きることができますが、それらをすべてお金で買うようになった今では、「命をいただいている」という気持ちがほとんど失われています。

スーパーストアやコンビニエンスストアにはいろいろな食品が並んでいますが、それはどこからどうやってきたのか、なるべくわからない仕組みになっています。
例えば、ふりかけなど、世界中から集めたものを加工して混ぜ合わせた食品もあるのです。

もしコンビニやスーパーストアの棚が全部空っぽになったら、いくらお金を積んでも食べることができないということは、普段は忘れ去られています。

この本には、そんな自分の食べるものを人任せにしてしまった都市人とは対極の、生きものたちと身近に暮しながら、日々感謝しながら命をいただいている人たちの写真が載っています。


肉を食べるということは、動物を殺すということです。
朝、餌やりしたかわいい鶏を、客人が来たので夕方には絞め殺しておいしくいただくこともあります。
市場に送られる動物たちはそれを察知して、あるものは騒ぎ、あるものは異様におとなしくします。カンボジアで豚を放し飼いにしている農家がありました。豚はすり寄ってくるし、足元や入口のところで寝るし、まるで家族の一員のようでした。でもあるときいなくなっていた、時期が来たので、食べられてしまったのでした。

また、日本人には牛、豚、鶏だけが食肉だと思っている人が多くいます。
それらは飼育でき、安定供給することができるので、食肉として選ばれた動物に過ぎません。
 

これは、ラオスの田ネズミの焼いたものです。
ニンニクをこすりつけ、ナムプラー(ラオス語ならナンパー)を塗って、しばらく天日干ししてから焼きます。美味、美味。私の大好物です。
ラオスでは市場でも売っていますが、タイの農村では、自分たちで捕まえたものを食べていました。罠をつくって捕まえるのは、たいていは男の子たちの仕事でした。


これは蝙蝠の干物です。
干物は食べたことがありませんが、生のコウモリなら食べたことがあります。洞窟で捕まえて、その場であぶったのをいただきました。


これは、竹の中で育つ虫、炒って食べます。

こうやって、世界には日々生きものと向き合って、それをいただいている人たちがいます。
生存のために最重要な食べものを他者、それも見ず知らずの他者にゆだねて、おいしいの不味いのと言っている人たちと彼らと、どちらが人が生きる仕組みがわかるか、どちらが生きる力が強いかは、一目瞭然です。

森枝さんは、私たちが食べているものは、塩を除けば、すべて生きものからできている、私たちは生きものを食べているのだと結んでいます。




6 件のコメント:

  1. 今頃気付きました。ご紹介、ありがとうございました。

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  2. 枯枝亭卓庵さん
    どうも、どうも。
    これを見ると田ネズミが食べたくて、生唾が出てきます。
    この本は「たくさんのふしぎ」ではありませんが、とうとうこの年になって「たくさんのふしぎ」を定期購読することにしました。アンケート欄に「お子様の年齢」を書く欄がありました。書けないって(笑)。
    一番最近手にしたのが、『南極の生きものたち』、個別だったら注文しなかったと思いますが、これもおもしろい。ナンキョクオキアミの総重量が人間の総重量の3、4倍になるって知っていました?人間の総重量が蟻の総重量を最近越えたことは知っていましたが、ナンキョクオキアミはその比ではありませんでした。鯨、ペンギン、アザラシなど、みんなナンキョクオキアミを食べて命をつないでいます。
    地球は面白いですね。

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  3. まねっこして1月号からの「たくさんのふしぎ」の定期購読申込みました~。自分で買うとどうしても選んでしまいますが、強制的に送られてくると春さんみたいに意外な発見があっていいですね。うちには小学生もいますし。ただよく買い物に行くショッピングモールの本屋でいつでも買えるのに100円の送料を払うのは。。。とせこく迷っていたら、雑誌専門サイトでの定期購読は送料無料だったのでそちらで申し込みました。

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  4. hiyocoさん
    知らなかった、送料無料があったんですね。来年から福音館直接をやめて、送料無料サイトに乗り換えます。hiyocoさんちは息子ちゃんがいるので、堂々と買えますね(笑)。
    本がたまると言っても、薄いからそう場所もとられないし、バックナンバーをチェックしていると言っても見逃すことも多いし、その点定期購読は安心です。これからどんどん賢くなるつもりです(笑)。
    1月号はトドマツですね。楽しみ、楽しみ。

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  5. 春さんは「たくさんのふしぎ」を読んでどんどん進化していくんですね!fujisanというサイトです。でも会社は渋谷の南平台です(笑)。「雑誌」で検索したらトップで出てきます。

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  6. hiyocoさん
    ありがとう。来年からfujisanにします。福音館も半年で半額とか、一年で無料とかにすればいいのにね。
    はい、どんどん賢くなって、しかしキャパが決まっているので前のことはどんどん忘れていくつもりです(笑)。
    hiyocoさんもヤドカリの飼育の文を書いて、写真はあるから、「たくさんのふしぎ」で著者デビューをしてみたらいかがですか?
    かわいくて、日本中ヤドカリブームになるかも。

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