2015年1月18日日曜日

鈴形の土鈴


伏見でつくられた、昭和初期の埴鈴(はにすず)です。
稲荷鈴とも呼ばれ、小さい鈴を5個から10個、麻紐でつないだだけの素朴なもの。昔は、この鈴を果樹の枝に吊り下げれば実が鈴成りに生るとか、井戸に吊るせば虫が湧かないなどと、たくさんの人たちに求められました。


これは、蚕鈴の一種の福鈴のようです。
岐阜市の美江寺で、蚕祭(旧正月晦日)に境内で売られていた縁起物の一つです。
美江寺は、もともとは五穀豊穣祈­願のお寺でしたが、明治中期から養蚕が盛んになったことによって養蚕祈願へと変移し、信仰を集めました。
この土鈴を買い求めて蚕室に吊るしておくと、蚕が害敵の鼠にやられず、よく育つと信じられました。また、蚕の増殖多産を招くとも言われ、もっとも盛んな時代には、寺の沿道にズラリと土鈴の店が並んで、
「上機嫌、上機嫌」
と呼び合い、売り競っていたそうです。

この鈴は、英彦山のがらがらのように藁を通して、その藁を束ねるのですが、藁が失われています。


これも、その美江寺の蚕祭りで売られた木魚鈴でしょうか?


これは富山県の蛇の目鈴です。
江戸時代からつくられていたもので、蛇の頭だけをモチーフに、目を強調して、一つ目 二つ目 三つ目などの模様がつけられているものです。
子供の虫封じや、疱瘡除けのまじない鈴として用いられました。
 

これは、鹿児島神宮の土鈴のようですが、一つ失われています。


縁あって、私の手元に来た土鈴たち、どれも1942年(昭和17年)以前につくられたものです。

土鈴は、豆が莢の中でからからと鳴るのに神秘を感じて、その力にあやかりたいと、縄文時代からつくられてきました。
神社仏閣の授与品の多くが土鈴になっていて、鳥や動物の土鈴がたくさんありますが、ただの鈴形の土鈴も、捨てがたい味があります。
土鈴愛好家たちは、さんざん変わり鈴を集めて、最後には埴鈴に回帰すると言われているのが肯けそうな、可愛い土鈴たちです。




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