伏見でつくられた、昭和初期の埴鈴(はにすず)です。
稲荷鈴とも呼ばれ、小さい鈴を5個から10個、麻紐でつないだだけの素朴なもの。昔は、この鈴を果樹の枝に吊り下げれば実が鈴成りに生るとか、井戸に吊るせば虫が湧かないなどと、たくさんの人たちに求められました。
これは、蚕鈴の一種の福鈴のようです。
岐阜市の美江寺で、蚕祭(旧正月晦日)に境内で売られていた縁起物の一つです。
美江寺は、もともとは五穀豊穣祈
この土鈴を買い求めて蚕室に吊るしておくと、蚕が害敵の鼠にやられず、よく育つと信じられました。また、蚕の増殖多産を招くとも言われ、もっとも盛んな時代には、寺の沿道にズラリと土鈴の店が並んで、
「上機嫌、上機嫌」
と呼び合い、売り競っていたそうです。
この鈴は、英彦山のがらがらのように藁を通して、その藁を束ねるのですが、藁が失われています。
これも、その美江寺の蚕祭りで売られた木魚鈴でしょうか?
これは富山県の蛇の目鈴です。
江戸時代からつくられていたもので、蛇の頭だけをモチーフに、目を強調して、一つ目 二つ目 三つ目などの模様がつけられているものです。
子供の虫封じや、疱瘡除けのまじない鈴として用いられました。
これは、鹿児島神宮の土鈴のようですが、一つ失われています。
縁あって、私の手元に来た土鈴たち、どれも1942年(昭和17年)以前につくられたものです。
土鈴は、豆が莢の中でからからと鳴るのに神秘を感じて、その力にあやかりたいと、縄文時代からつくられてきました。
神社仏閣の授与品の多くが土鈴になっていて、鳥や動物の土鈴がたくさんありますが、ただの鈴形の土鈴も、捨てがたい味があります。
土鈴愛好家たちは、さんざん変わり鈴を集めて、最後には埴鈴に回帰すると言われているのが肯けそうな、可愛い土鈴たちです。
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