近くの骨董市は月に二回やっていますが、その二回とも店を出す人と、月に一度しか店を出さない人がいます。
おもちゃ骨董のさわださんは、第三日曜日だけの出店ですから、月に一度だけ会いますが、先月は激しい雨で行かなかったので、二ヶ月ぶりに会いました。
顔を見るなり、
「セルロイドの黒い招き猫があったんだけど、さっき売れちゃった」
そんなこと、聞きたくも何ともありません。
「買ったのは、ご夫婦で来ている人で、ほら、そこのマフラー巻いた人。ほかにも猫があったんだけど売れちゃった」
聞きたくないって。
それに、セルロイドの黒い招き猫なら、以前さわださんから買って、持っています。
それでも、店先には、いろんな猫がありました。
「これはいらないよね?」
と、常滑の小さな猫を手に取って見せます。
「いりません」
まあ、値段も安いことだし、こんな猫でもいただいていこうか。
座布団が糊で貼りつけてある、この安っぽい「招愛猫」も、味のない瀬戸猫ももらっていくか。
と、「枯れ木も山の賑わい」気分です。
と、さわださんが黒猫を手に取ります。
「これはどう?」
「いらない」
「だって、セットのようだよ」
「どれと?」
「白黒と」
手びねりか張り子か、締まりのない身体に目鼻のついたトドのような猫、どう見ても欲しくありません。
「ほら、裏に同じマークがついている。これと替えて持って行ったら?」
さわださんは、「招愛猫」を置いていくことを進めます。
「うぅん。この安っぽさが捨てがたいんだよなぁ」
「ほら、並べてみて」
並べてみると、白黒猫までへたくそに見えてきました。
でも、
「そんなに言うんなら、もらっていくか」
「よし、そんなに言うんならおまけだ」
と言うのが同時でした。
「だって、もう値引きしてもらっているよ」
「いいの、いいの」
というわけで、がらくた猫四匹組がやってきました。
星の模様の石けりつきです。
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