参加者はおもに建築家の諸氏でした。
家賀(けが)集落に登ったあと、いったん貞光川まで降りてきて、さらに南の赤松集落を目指す途中で、休憩しました。
吉野川の支流の貞光川は、日本有数の清流だとか、青い水が阿波青石に映えて、勢いよく流れていました。
河原に降りた場所は貞光の中心で、集落というには大きく、町というには川沿いで広がりにくい、宿などもあるところでした。
休憩を終えて出発するときになって、ガイドをしてくださっているSさんの姿が見えませんでした。
「Sさんは?」
「このすぐ近くのガソリンスタンドで待っています」
と、やはりガイドをしてくれているNさん。
数十メートル先のガソリンスタンドに着いたら、マイクロバスの出入口に、Sさんが姿をあらわしました。
その数十分前、家賀から降りてくる途中、もっと山の中を走っているときに、ガイドのNさんが、マイクロバスの車窓に林立する棕櫚の木を見つけて、その説明していた時、参加者の一人しのさんが、思い出したように、
「この辺りでは、棕櫚の葉でハエたたきをつくっているかしら?」
と、たずねました。
しのさんは、東京の人ですが、仕事先の熊本県の水俣で農家を訪問して、棕櫚の葉のハエたたきを見て、関心を寄せていたのです。
「棕櫚のハエたたきは、叩いてもハエがつぶれないのよ」
すると、この辺りの文化や歴史についてよく勉強し、アンテナも張り巡らしている、つるぎ町の「町おこし協力隊」のSさんが、
「ありますよ。見たいですか?」
と、しのさんに訊きました。
「見たい、見たい」
と、しのさんは、大喜びでした。
さて、ガソリンスタンドの前でマイクロバスに乗り込んできたSさんが、
「棕櫚の葉のハエたたきが欲しい人は、バスを降りて、見てください。少しずつ形が違いますから」
と、言いました。
「えぇ、手に入るの?」
と、喜ぶしのさん。そして私と北海道から参加したさくらいさんの女性三人と、ガイドの一人のお百姓のBさんが、マイクロバスを降りました。
その場では写真を撮り忘れましたが、お年寄りがつくったのか、ガソリンスタンドのご主人が、十数本の棕櫚の葉のハエたたきを抱えて、待っていてくれました。
てっきり売り物だと思って、私たち四人は思い思いに好きなのを手に取りましたが、プレゼントして下さるとのことで、ありがたくいただいてきました。
以後、どこへ行くにも持っていた、棕櫚の葉のハエたたきです。
左が葉表で、右が葉裏です。
葉を編んだ糸を、茎に巻きつけてありますが、こうしておけば、叩いたとき、糸がすっぽ抜けたりしないのでしょう。
自分でつくるときの参考になります。
棕櫚の葉のハエたたきは、タイのラタン製のものと、大きさがよく似ていました。
どちらももったいなくて、ハエは叩けません。
自分でもつくってみようと、棕櫚の葉を一枚とってきて、乾かしているところです。
近所の棕櫚の木をじーっと眺め「タコ糸があれば作れそう」と思いました。その後ショッピングモールへ買い物に行ったら、駐車場の周りはぐるっと100本ぐらいの棕櫚で囲まれていました。山ほど作れそうです。でもたまにしかハエが入ってこないんだけど(笑)。出て行かないハエがいた時は虫網で捕まえて外に逃がしています。
返信削除ところで生えたものを切ったのですか?それとも枯れて落ちたもの?
hiyocoさん
返信削除緑色の、傷んでない元気そうな葉を切りました。
このハエたたきは葉を13に分けて束ねてあります。棕櫚の葉は元ではくっついていたり、離れていたりするんだけれど、先端では30枚以上に分かれているので、切ってしまわないで、何枚か一緒に束ねているようです。まぁ、実際にハエを叩くというより、棕櫚の葉細工の楽しみですね。以前魚の棕櫚の葉でモビールをつくったら、乾いて細くなってみすぼらしくなりましたが、籠を編んだのは、健在です。
なかなか乾かないので、葉の先を切ってみましたが、まだ緑で硬い。よく乾かして、つくるときは水に浸して濡らしてからつくるといいと思います。籠は緑の時につくりましたけどね。