2017年10月8日日曜日

木の器


人はどうやって器を手に入れたのでしょう?
アフリカのある地方には、切れば器になるひょうたんがありました。熱帯で、ココヤシの実を削って器をつくった人々もいました。熱帯から遠く離れた日本列島の縄文人の中にも、浜に漂着したココヤシの殻で器をつくって使っていた人がいたようで、遺跡から見つかっています。
かつて、サラワクの熱帯多雨林の中を11時間歩いて、とある村を訪ねたとき、途中で、私は太い竹を切ってもらって、中にたまっていた水をそのまま飲んだことがありました。竹は立派な器でした。また同じ日、泉の傍を通ったときは、大きめの葉っぱをちぎり、折って器にして持つ方法を教えてもらって、それで水をすくって飲みました。

そんな器はやがて、木を削ったり、土を焼いたり、金属を鋳込んだりしてつくられるようになりました。
人工的につくられた器としては、木を削ったものがもっとも古く、最も広域で使われてきたかもしれません。


スウェーデンのククサ、木彫りの椀です。
ククサは、フィンランドやスウェーデンの北部のラップランドに住むサーミ人に古くから伝わるもので、白樺の木のこぶからつくりました。
材料となるバハカと呼ばれる白樺のこぶは、十分な大きさに育つまで30年、小さなこぶでも15年ほどかかったので、長い時間をかけてこぶができるのを待ってつくったものでした。


フィンランドでは、持ち手の短いククサが定番になっていますが、スウェーデンでは、持ち手の長い形のものもよく見られました。


木こぶは硬くて彫りにくいのですが、できたものはとても丈夫です。
一刀、一刀、彫ったあとが残っている、これは19世紀のものです。


持ち手の端が、鉤型になっています。


この鉤を指に引っ掛けると、椀に液体を入れても、持ったときとても安定します。


椀(カップ)として使い、ときには杓子としても使ったのでしょう。
  

同じような目的で、轆轤を使わないで彫られた椀、カップやボウルたちです。
奥左はソマリアのもの、奥右はパキスタンのペシャワールあたりのもの、中左と真ん中はフィリピンの北ルソンのイロカノのもの、中右と前左はケニア北西部のトゥルカナのカップ、そして前右がスウェーデンのククサです。
どの椀にも、手慣れた、高い技術を感じます。







6 件のコメント:

  1. 白樺は瘤ができやすいんでしょうかね。検索したらかなり巨大なものもありましたが、春さんのククサは柄が付いた状態で彫られているようでかなり贅沢な瘤の使い方ですね。義姉の山中湖の山荘に白樺がありますが、瘤は記憶にありません。

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  2. hiyocoさん
    白樺のこぶでつくると言われているので、鵜呑みにして(ウミウかな?笑)、画像見てなかった、びっくり!私も白樺の木は見たことあるし、ここでも植えている人がいるけれど(暖かすぎ!)、一度もこぶは見たことがありません。根っこの木は硬いと言われているので、根っこのあたりにできるのかと思っていたけど、幹の途中ですね。
    何か、改めてウィキの時代はすごいなぁ、20世紀と違うなぁと思いました。
    それにしても、あんなのができたら、気持ち悪いと思いこそすれ、使ってみようという気持ちになるかどうか。
    あの、トラクターいっぱいの写真、こぶの幅は1.5mくらいかな、驚きです!こぶだけで、100年以上経っているんでしょうね。

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  3. ククサって、話には聞いて、羨ましく思っていました…。(^^)。
    堅い瘤を削るのに、凸部を削るのはまあいいとして、ククサに限らず、凹部を削ってへこませてカップにするのは、ノミとかで削るとして、深いところを削るのがイメージしにくくて、難しいんだろうなと思います。ノミが特殊な形をしているんでしょうかね?

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  4. karatさん
    以前、マイプレートをつくったとき(http://koharu2009.blogspot.jp/2017/07/blog-post_3.html)ククサをつくっていた人もいました。今どきですから、荒くはドリルで穴を開けるのですが、仕上げは丸ノミ一本でした。底の方は先生が手直ししてあげていたと思いますが、基本的には丸ノミ一本だったような。外側は、特別なかんなを使っていましたが。
    あと、縁の仕上げは切り出しです。私もいい切り出しが欲しくて、欲しくて!(丸ノミは研げないから、笑)。
    夏に鍛冶屋さんを訪問したときは、「これだけの投資に見合った使い方ができるのか?」と悩んで、切り出しを買うのを断念しましたが、やっぱり手に入れたい!新しい鋼で三万円弱、古い鋼で四万円弱。うぅぅ....。
    それにしても、アフリカのトゥルカナとかパキスタンの少数民族の人たち、そんないい刃物で彫ったとは思えないですよね。道具にばかり凝ることにはついて批判的な私なのに、使わせてもらった、先生の良い刃物のすばらしさ!やっぱり、良い刃物は良いです(^^♪が?

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  5. ああ、いい刃物はいいですよー!。包丁だって切り心地が違います!鰹節削りだって、ピーラーだって、マトリョーシカの描き損じを削る彫刻刀だって…(^^;)。いい刃物はやる気が出ます(笑)。「弘法は筆を選ばず…」は嘘だと思っています。

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  6. karatさん
    よっくわかります。その気持ち!
    やっぱり切り出しを買いに行こうかなぁ。本当は、丸ノミも彫刻刀も欲しいなぁ(果てしないものは欲望!笑)。

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