2018年3月7日水曜日

曲木の美


直径九寸の曲げわっぱです。
四段重ねに見えて、どんな蓋で、どうなっているのか、ちょっと見にはわかりません。
これも、「美しきものたち」で出逢いました。


じつは、一番上の段が、蓋になっています。
開けると深い容器で、ご飯のおひつだったのではないかなと思われました。杉の曲げわっぱの盛んな、秋田でつくられたものかもしれません。
もしおひつだったとしたら、桶づくりではないこんなに大きな曲げわっぱのおひつを見たのは初めてです。

内側は、一枚の広い板でつくってあります。
外は遊び心で三段にして、蓋と合わせて四段に見せたか、あるいは、外は細くつくる方が、内側と直径を合わせて貼り合わせる作業が楽だったのか、いずれにしても、素敵な仕上がりになっています。


曲げた板は、木の皮(たぶん桜の皮)で綴ってありますが、中を綴ってあるところと、外を綴ってあるところは、重なっていません。
まず中をつくってから、外をつくって、それを嵌めたのでしょうか?


底板は、側板に嵌め込んであり、


蓋の甲板は、厚みの半分は内側に嵌め入れ、半分は外に出してあります。
つまり、甲板の厚みは、見えているところのおよそ倍ということです。全体に漆で拭いてあるので、接着も漆を使ったものでしょう。


ところどころで、ずれないように中と外を綴ってあるところもあります。
つくりはとてもよくて、正円になっているので、蓋を、どんな向きでもすっと被せることができます。熟練の技です。

蓋はぴったり閉まるので、片手で開けるというわけにはいきません。蓋を両手で持ちあげるようにするとするすると開きます。ご飯が入っていて重さがあれば、もっとすっと開きますが、食事ごとに両手を使うのは面倒なので、昆布など、食品の保存容器だった可能性もあります。


桶づくりでも、曲げわっぱでも、おひつの蓋は、わりと大き目につくられていて、片手で開閉できます。


左は、今でも秋田でつくられている曲げわっぱのおひつですが、蓋は被せてあります。 


大きい曲げわっぱは、どれも迫力があります。
左から、フィンランド、日本、スウェーデンの曲げわっぱです。


フィンランドのものは、蓋についた持ち手を持って振り回しても外れないほどぴったり閉まります。
スウェーデンのは曲げわっぱは開閉が簡単なので、各種のお茶を入れて、日々愛用しています。
さて、日本の曲げわっぱは、どうやって使いましょうか?





2 件のコメント:

  1. そうか~、開け閉めを考えておひつの蓋はカパカパなんですね!ぴったりサイズだとご飯の湿気を吸って蓋が開かなくなりそうですね。

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  2. hiyocoさん
    前からそう思っていたわけじゃなくて、桶づくりのおひつ見ていたら、「なんてぶかぶかなんだろう」と気が付いたわけでした。
    昔(50年前?)だったら、ちゃぶ台の脇におひつを置いておいて、お母さんがご飯よそってあげたのかな?「おかわり」というたびに片手で茶碗を受け取って、それを一度置いて、おひつの蓋を両手で開けて、ご飯をよそって渡して、また両手でふたを閉めてって、できないなぁと思いました(笑)。
    今だったら、小さめのおひつを卓上に置いて、好きによそってもらうから、蓋は取りっぱなしでしょうね。
    でも、もっと考えれば、貧乏人はおかゆ(100年前?)で、おかゆはおひつには入れられなくて鍋や釜から直接よそっただろうから、おひつを使うとしたらお金持ちの家。女中が開け閉めしていたので、使いやすさを考えなくてよかった、という可能性もあります。

    道具には、よく見かけるものにも、あまり見ないものにも、歴史がありますねぇ。

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