2018年11月27日火曜日

棄景

しばらく前に、10年以上前に預かった息子の本の入った段ボール箱がいくつか、物置から出てきましたが、その本を片づけるよい場所が、なかなか見つかりません。いまだ、そのあたりに放りっぱなしです。


そんな、息子の本の中にあった写真集、『棄景Ⅱ』(丸田祥三、洋泉社、1995年)です。


この本が出た1990年代以前からも、打ち捨てられた建造物はあったと思いますが、今ほど多くはなかったでしょう。今では、空き家が全国で820万戸、このあたりでも、朽ちるままに捨て置かれている家屋は珍しくありません。
朽ちる民家も哀れですが、派手に色を塗った奇抜な形のパチンコ屋や、金網と鉄格子を張り巡らした精神病院などが放棄されているのは、見るに堪えない光景です。


この数年は、税制(更地の方が高い)や廃業するときの規則などが変わったのか、閉店する店が建物を壊し、更地に戻す例が出てきました。
ちょっと前までホームセンターや100円ショップがあったところが更地になっているのは不思議な感覚ですが、安心です。


それにしても、栄枯盛衰、これらの打ち捨てられた建物の写真からは、人の気配があってにぎわっていたころの姿が目に見えそうですが、我が家の近くに、一度も人が住むことなく打ち捨てられた建物が二つあります。
  

一つはコンクリートのアパート、17年前にはすでに黒ずんでいました。
とくに、周りの草が生い茂る夏は、開口部は不気味に黒々として、底なしのように見えます。


何棟もつないだ大きな建物で、四階を途中まで立ち上げた後で中断しています。
バブルがはじけて資金繰りができなくなったのか、違法建築で建設を差し止められたのか、それとも、強度に問題があったのか、真相はわかりませんが、もの悲し気です。

もう一つ、建設途中で中断した木造住宅は、あまりにも悲しいので写真をなしにしました。
何があったのか、柱を建て、屋根までできて中断したまま、黒ずみながら、これも17年以上立ち尽くしています。






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