2018年12月13日木曜日

母の本


今回見つかった夫の母の資料の多くは本でした。


『四季の粧・上』は、表紙はかびてしまっていましたが、中はわりあい無事でした。
和綴じ本で、奥付もないので、いつごろの本か、見当もつきません。
着物の意匠が載っていて、すべて印刷ではなく木版画です。一般向けの本ではなく、京都の友禅染め屋さん向けの本だったのかと思いましたが、『絵本宝能縷』(明日UP)を見て、白地の反物を染めるためのお客さん向けの絵かもしれないとも思いました。
ただ、模様は大胆すぎなので、子ども向けかもしれません。


どの意匠もおもしろくて、こんな着物があったら、ちょっと着てみたくなりそうです。


例えば舟の意匠にも、いろいろあります。


これは、柴を運んでいる舟でしょうか。橋や雲とチドリの配置がよく、色も素敵です。


そして、おもちゃの舟。折り紙の舟、笹の葉の舟などを浮かべています。
こんな小袖を着た人が街にあふれていたら、振り返って見ずにはいられません。
  

これらは、実際の着物になったのでしょうか?
左は裃と袴、右は反物の洗い張りの意匠です。洗い張りはもう、死語になりました。
  

宝尽くしなどおめでたい模様や、菊や藤などの季節の花や雪などのほかに、凧、羽根つき、獅子舞、門松などのお正月模様、鏡、漁網、里の風景、盆栽、糸巻き、烏帽子、絵馬、水車、扇などなど、いろいろな模様の小袖がありました。



ちなみに、『着物と日本の色・子ども着物編』(弓岡勝美コレクション、PIE BOOKS、2007年)に載っている着物です。
『四季の粧』に描かれている着物たちと同じ大胆さ、いつごろのものかわかりませんが、染料の色からして明治以降の着物でしょうか。


『旧儀装飾十六式圖譜』(横36.5×縦24.5)は、わぁ、ごめんなさい、カビだらけです。


それでも、拭いたら何とかカビは落ちました。


本は、屏風のようにじぐざぐと畳むつくりで、表紙は麻の紋織りの布を使っています。


奥付があり、明治36年、発行は京都美術協會、画者は古谷紅、彫刻者は木下楢之助です。印刷者の名前もありますが、これも木版印刷、つまり摺りでしょうか。
ネットで見ると、これは明治36年に京都で開催された古美術展覧会に出品された作品のの目録のようなものだったようです。


お互いにくっついている紙を、そうっと、しかしべりべりとはがしてみると、中もカビだらけです。
絵と絵の間にパラフィン紙のようなものが挟んであったのですが、それに皺が寄り、皺に沿ってカビが盛り上がっていました。


そうっと拭くと、何とかカビがとれました。


たくさんの興味深い絵がありますが、私が一番好きなのは「遊戯具飾」の絵、節季ごとの子どものための飾りやおもちゃが飾られています。


土人形?それとも磁器人形?
象もいます。


かわいいねぇ。


もう一冊、これは『薫衣染』(横33×縦40.5)で、十巻セットのもののようですが、母は四、五、九巻を持っていました。


奥付を見ると、昭和九年から十年にかけて発行されたものです。


これも木版画でしょうか。


紙を金属の型で強く押したのか、線がくぼんでいます。
白い線は、まるで筆で絵の具を盛ったように見えますが、


ほかの絵にも盛り上がっている白がありますから、盛り上がる性質の絵の具を利用した版画なのでしょう。


対象者は誰か、友禅染めに携わる人向けにつくられたのか、客用か、これもわかりません。
  

もう一冊、蚕の飼育に関する絵本があるのですが、明日UPします。

追記:

『四季の粧』の最初に、着物をまとった女性の絵が載っていたので追加します。


最初から載せておけばよかった、なるほどこのように着たのかと、着方がよくわかります。





6 件のコメント:

  1. 素晴らしいですね!!!
    見たいです〜
    こんな着物があったら、楽しすぎます!
    どんな人向けの着物だったのでしょうか。
    庶民ではなく…芸方でしょうか。

    そして、よく戦火を逃れて落日荘にたどり着いた本たち。ここに連れてこられて、安堵したでしょうね。

    返信削除
  2. すごいです!。
    外側がかびていても中の色彩はとても鮮やかで、感心します。救出されてよかったです。
     意匠的には最初のスズメの柄が素敵だとか、いや紫の千鳥と舟の柄の方が着た時に素敵ではないか…とか、着物も着ないのに、あれこれ思ってしまいましたが(^^;)、。
     洗い張りが意匠になっているのもすごいですね。洗い張り…晴れた日の庭先で母がやっていたのを思い出します。
    古い着物をほどいて洗って干すときに、洗い張りをしたらピシッとなるのかなと思っていました。場所も道具もありませんので、やり方も分かりません。もう本当に死語ですね。今は物干し竿に洗濯バサミ、あとでアイロンがけです(^^)。 脱いだ袴の意匠って…誰が着るのだろう?考えてしまいます。
     お義母様の色々な思いがあって残された資料なのですね。

    返信削除
  3. Akemi Fujimaさん
    私もちらっと役者の着物かと思いましたが、わかりません。江戸も初期だったら普通の町の人はこんな模様の着物を着ていそうですが、末期になると小さな模様が主流になりますよね。
    でも、花街に持って行って、花魁とか禿から注文を取るならありそうです。
    まぁ、湿った地下室から救出できてよかったです。

    もっとも、私がずっと探しているものはいまだに出てきません。大したものじゃない、ブリキのアタッシュケースなのですが(笑)、大きいものなのにどうして出てこない?

    返信削除
  4. karatさん
    ずいぶん湿気ていましたが、そう傷んでなくてよかったです。
    私も、着物を着ないのに自分が着た場合を想像してしまいました。載せませんでしたが水車の絵も素敵でした(^^♪
    そういえば、この本の最初のページに、着物を着た女性の絵がありました。これも載せておけばよかった、木方の参考になるので追加しておきます。
    この絵を見ると、江戸も初期のような気がしてきました。

    返信削除
  5. こんばんは。
    「四季の粧」も明治36年に発行されているようです。画家は森雄山という人らしいです。

    返信削除
  6. かねぽんさん
    ありがとうございます。では、純粋に絵本としてつくられた可能性が大きいかもしれませんね。
    江戸から明治にかけて、着物の模様が地味に地味になって大正でまたちょっと派手になっていますが、その昔を懐かしんで出されたのかもしれません。

    返信削除