2018年12月15日土曜日

LIXILの本

先日、生まれたばかりの、孫のたけちゃんに会いに行ったとき、面会は夕方からだったので、その前に銀座で友人Nさん写真展を観ました。
昔だったら、銀座へ行ったなら松屋とか伊東屋、特に松屋には必ず寄ったところですが、今ではすっかり変わってしまったので、興味もありません。しかし、時間がありました。
「おお、そうだ!」
と思い出して足を向けたのは、もとINAX、今はLIXILのギャラリーの本屋さんでした。
ところが何てこと、すっかり縮小されていて、ギャラリーはありましたが本屋はなくなっていました。ただ、自社発行の本のバックナンバーは閲覧することができて、在庫があるものなら、売ってもくれます。
しかし、関心のある本のほとんどは廃版になっていて、たった一冊だけ買ってきました。


『集落が育てる設計図』(2012年)は、アフリカの家と、インドネシアの家および集落の写真や測量した図面を載せた本です。
何故、アフリカとインドネシアという組み合わせかというと、藤井明さんという著者の東大の先生の研究室で調査した家と集落を収録しているからです。

写真も図面もスケッチ(パースペクティブ)も、なかなか興味深いものです
現地で測量するとなると、住民に許可を得たとはいえ、重箱の隅をつつくように隅から隅まで残さず実測し、帰国してからはそれを紙の上でつなげてと、力が要ります。とくに不定形の家や散在している集落は、測り方からして工夫のいるところですが、デジタルカメラができてからは、写真をメモ代わりにできるので、昔よりは楽になったのかもしれません。


西アフリカのロビの家。
国名も地名も書いてありませんが、ブルギナファソのようです。ロビ人は、ブルギナファソ、ガーナ、コートジボワールにまたがって住んでいます。
この本の解説には、ヨーロッパなどの植民者に侵略された歴史から、西アフリカに住む人たちは防御意識が強く、住まいは住民を外部から守る意識を持っていると書かれていますが、それはちょっと違うかもしれません。
長く、ブルギナファソで暮らされた文化人類学者の川田順三さんによると、同じ地域に交じり合って住むモシは、ロビより穏やかな性格で、家も、防御的ではないあけっぴろげの家をつくっています。


実際の家は、この図に屋根がかかっています。
図は力作ですが、もう一枚の平面図と合わせてみても、どこが屋根がかかっていない部分で、どこに出入り口としての穴が開いているのか、よくわかりませんでした。


ロビの、数軒つながってしまって要塞と化した集合住宅の出入り口はこれ、梯子を上り、他人の家の屋上を通って外に出ます。


インドネシア、スマトラ島の西のニアス島の家、屋根はサゴヤシの葉で葺いています。
この立派な家は、「おぅい」と呼べば声が届くくらいの距離を保って、点在しているそうです。


インドネシアには高床三層構造になっている家が多いのですが、これもその一つです。


これはスンダ諸島の家の、高床の一階部分です。
とっても居心地がよさそうな空間、私的には上のニアスの家よりも好きです。

この写真で興味深いのは、柱にはめてある巨大な「ネズミ返し」です。
柱にネズミ返しをつけておけば、ネズミだけでなく、蟻も登れません。熱帯生活で、蟻は結構うっとうしいものです。
また、家とは関係ないのですが、女性がアフリカの女性のように足を投げ出して座っているところも興味深いです。腰と脚の接続部分の構造上、アジアの女性はこの姿勢で長く座れないと思っていましたが、インドネシア人(スンダ、広義のマレー人)が座れています!おそらく、これがもっとも楽な座り方で、何時間も座っていられるはずです。
この座り方ができるかできないかは、先天的な構造だけではなくて、赤ん坊の時の抱き方、負ぶい方によって、脚のつけ根の可動性が広がるのではないかという説がありますが、実際そうなのでしょうか?
興味津々です。


スンダの家は四階建て、二階は居間と寝室と台所になっていて、三、四階は穀物蔵、そして三階、四階は神の棲む神聖な場所でもあります。
夜は、二階に竹の梯子を引き上げて寝れば、防犯も完ぺきというわけです。

今はどうかわかりませんが、インドネシアでは毎朝、その日食べるだけの米を搗きました。そのとき、屋根裏に住む神さまに感謝の音が届くよう、わざとよい音が響く台の上に臼を乗せて、毎朝軽やかな音を響かせて米を搗いていました。
この家を見ていると、スンダ諸島に引っ越してこんな家に住みたくなります。

もちろんこの三軒だけでなく、たくさんの家や集落が紹介されています。


さて、見本は置いてあったのに、在庫がなくなっていた本のうち、『お守り動物園』(1996年)を、買う手立てはないのかとAmazonで見たらありました。
猿、犬などの実在の動物、龍、河童など空想の動物、鳥、魚、貝などなど、人間のお守りとなった動物たちが取り上げられています。


中国の子どもを守るのは虎です。
虎のおもちゃだけでなく、虎模様の服、虎の靴、虎の枕、虎の帽子などなどあります。


端午の節句の虎飾り。
背守りではなく肩守りなら、眠くなって横になっても痛くありません。
かわいいなぁ!


もちろん、我が家に生息していない動物たちもたくさん載っていましたが、生息している動物たちも、たくさん載っていました。
んっ、赤べこも疱瘡除けだったのか?
それは知りませんでした。
かつて赤いものは疱瘡除けとされて、疱瘡にかかった子どもの枕元は、赤いもので埋め尽くされました。


さて、日本のお守り動物ランキングの上位に位置すると思われる招き猫は、なんと最末席に位置していました。
中国は虎、インドは象(ガネーシャ)、東南アジアはナーガ(蛇)やガルーダ(鳥)、そして日本は狐、馬と猫だと思っていたのに...。
猫は、日本の主産業であった養蚕に欠かせない動物だったので、猫が信仰の対象になるのは、必然だったと思っていました。
猫神と養蚕の関係については、詳しくて興味深いブログがあります。


最後に来年の干支のイノシシを。
これは、ニューギニアのカヌーの舳先です。
ニューギニアには、豚は舟でさらわれても飼い主のもとに泳ぎ帰るという言い伝えがあるところから、イノシシ(豚)を舳先に彫り込んで、豊漁と同時に航海の安全(必ず帰ってくる)を祈ったそうです。

ちなみに、本家中国のことは知りませんが、タイ(の中国系社会)などでは干支のイノシシは豚は区別していないというか、むしろ豚でした。
「わたし、豚年。だから豚の置物を集めているの」
といった具合です。


INAXブックレットの多くはAmazonで買えます。
しかし、欲しいと思って見た『漂着物考』は、3,000円代。それでも高いのに、なんと新品には90,151円と値がついていました。
一体、誰が買うのでしょう?





4 件のコメント:

  1. えー、今年5月LIXILギャラリーに行ったとき、本屋さんあって種の本買ったのに!と思ったら、7月20日付で閉店のご挨拶が載っていました。びっくりです。amazon様にすがるしかないのですね。でも9万円って何!!!

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  2. hiyocoさん
    トステムと合併して社風が変わったかもしれないし、あまり建設がない時代になっているのか、会社として遊んではいられないのかもしれません。せっかく、楽しく遊んでいただいていたのに(笑)。
    ビーチコーミングする人しか関心を示さないだろうブックレットに、9万円出す人、絶対いないと思いますよね?私など、3000円でも諦めましたが、桁が違います。

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  3. こんばんは。
    9万円となってるのは、おそらくクレジットカードの現金化に利用されているんだと思います。
    通報してやった方が良いかも知れません。

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  4. かねぽんさん
    犯罪のにおいということですか?恐ろしいですね。
    今、そのサイトを調べてみたら、9万円のほかに89,000円というのもありました。どうなっているのかわかりません。

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