2019年8月20日火曜日

持っているのに!

先日の骨董市のある店先に、箱に入れられた郷土玩具を見つけ、初めての店でしたが足を止めて見ました。
まとめて置いてあるおもちゃは、どなたかのコレクションだったことが多く、集めた人の関心が色濃く出ているものです。郷土玩具ばかりではなくて、郷土玩具もどきや、民芸品、お土産品などが混じっていて、欲しいと思うものがほとんどない場合の方が多いのですが、その箱の中には、なかなか魅力的なおもちゃが入っていました。

こんなとき、持っていないおもちゃはさて置いて、すでに持っているおもちゃの方に引きつけられてしまう傾向が、私にはあります。


まず目を引いたのは、熊本県日奈久のベンタ人形でした。
しっかり包んでしまっていたのでしょう。つくったときのままの姿をしています。
ベンタ人形は、こけしのように頭と身体をつくり、手先と足先に赤い布を足し、それを身体に釘で打ちつけています。


しまわれていたベンタ人形は、重力で手足が下がってなくて、万歳をしています。
小さいベンタたちはほぼ同じサイズの6センチ、頭が黒いと白いの違いはありますが、よく似ています。
大きいサイズのものは、その昔、子どもたちが負ぶって遊びました。


明治初期から昭和初期まで、日奈久ではたくさんの人がベンタ人形や板角力、そしてキジ車をつくっていました。
ところが時代が変わり、新しいおもちゃが席巻すると次々と廃業に追い込まれ、昭和40年代以後は、桑原土産店が唯一の制作者になってしまいました。
桑原土産店はどうだったか知りませんが、郷土玩具は往々にして、つくり手が代替わりすると作風がすっかり変わってしまうことがよくあります。



ネットで見たベンタ人形たちのお顔がずいぶん違うのは、桑原家で代替わりしたからだけでなく、別のつくり手もいたからでしょう。

さて、以前のブログで、『Folk-toys』に載っているベンタ人形の手がついていないのを、「ヨーロッパ向けに手足をつけなかったのか」と書いてしまいましたが、じつはベンタ人形に手足をつけるようになったのは、明治中期以降で、それまでは手足はついてなかったそうです。


板角力も買いました。これも熊本県日奈久でつくられたものです。

 

 

板角力は、検索してみるとベンタ人形よりもっとバラエティーに富んでいました。


でも、今回買った板角力は、私がすでに持っていたのと、なんとなく雰囲気が似ています。


ただ脚の長さが違います。
古い板角力の脚は現代のお相撲さんなみに脚が長く、座らせると足が相手の脚のつけ根辺りまで伸びていますが、小さい方の足は、相手のお腹にまで届いていません。


ラベルが残っていて、作者はハヤシミヨコとあります。
板角力だけでなく、ベンタ人形もハヤシミヨコさんがつくられた可能性が大きいと思われますが、1000円という値段(700円に値下げしてありますが)から、1980年代あたりのものかと推測したのですが、それだと、制作しているのは桑原土産店しかなかった可能性があるので、どうなっているのかよくわかりません。
板の厚みは、小さい方がずっと厚い板を使っています。
ちなみに、私が以前から持っているものは、学生のころに桑原さんの家を訪ねて買い求めたものです。値段は覚えていませんが、当時は小さい土人形が50円でしたから、せいぜい100円から300円くらいではなかったかと思います。

日奈久のおもちゃは、ベンタ人形も板角力もキジ車も桐でできています。というのは、日奈久は下駄の産地で、捨てるのがもったいない下駄の端材を使って、おもちゃをつくり始めたという歴史があるからです。
板角力は、江戸時代の天保年間(1830-44年)に日奈久から嶋ヶ崎という力士が出て、それにちなんでつくられたそうです。







2 件のコメント:

  1. ベンタ人形はずっと手足を上げたままだったんですね(笑)。やっと日の目をみることが出来てほっとしているのでは。
    テレビの鑑定団で、使われていないとか箱がきれいなおもちゃが評価されるのがいつも納得いきません。おもちゃとしては不幸な感じがしてしまいます。その点、春さんのお人形はどれも可愛がられたものばかりですね!
    お相撲さんの足が長いのが不思議~。

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  2. hiyocoさん
    よく言ってくれた!私も箱に入れて取っておくことが高額になるというのはまったく同感できません。値が上がるのを待っているようなおもちゃへの向き合い方、とっても変だと思います。
    その昔、宮城県の鳴子の町役場に行ってこけしを見せてもらったとき、どれも真っ黒でてかてか光って模様も見えなくなっていて、とっても素敵でした。こんな感じになるにはいったい何年かかったんだろうと思いましたが、おんぶされたり舐められたりしてきたものだと思います(きなきな棒という、おしゃぶりのこけしもある)。それでこそ、人形みょうりに尽きますよね。

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