2019年8月22日木曜日

紙つばめ


骨董屋さんの箱の中にあった郷土玩具たち、これも、一目で惹かれました。
愛知県犬山の継鹿尾(つがお)山寂光院の紙つばめです。
紙つばめは、昭和40年ごろ(1960年代)まで、寂光院で、継鹿尾観音の例祭に限って、露店で売られていました。
参拝を終えた農家の人々は、田の虫を取る観音さまのお使いとして、紙つばめを一家で10個も20個も買い求め、田の畔に棒を立てて結びつけ、五穀豊穣を祈りました。
棒に取りつけられたつばめは、風が吹くとふわりと浮き上がり、経木でできた尾羽がくるくる回って飛翔し、うなり音を出しました。
田んぼの畔でたくさんのつばめが風になびくさまは、雅趣に飛んでいるだけでなく、実際に、種をまいた苗代などに鳥を近づかせない作用もしていたそうです。


紙つばめの身体は軽い紙粘土のようなものでできているようで、穴があけてあって竹ひごが貫通しています。
身体を通した竹ひごの後部分には経木でつくった尾羽を挟み、くちばしから突き出た一端には、ブリキの小さな円盤に穴を開けたものを突き刺して接着しています。



身体を貫通している竹ひごは、前後に2センチほど動くようにつくられています。


顔から針金が出ていますが、この針金部分でくちばしを表すと同時に、円盤が顔に近づきすぎないようにしてあります。


竹棒を持ってくるくると振り回すと、よく飛んで、唸り音もあげます。

愛知県犬山地域は郷土玩具の宝庫です。
古くから、犬山でんでん太鼓、犬山風車(かざぐるま)、犬山土人形、犬山はじき猿などなど、郷土色豊かな玩具がつくられ縁日などで売られていました。しかし、時代の変遷とともに、そのほとんどは姿を消してしまいました。
近年これらが少しずつ復元されているそうで、紙つばめもそうした復元品の一つです。

紙つばめなど、風が吹いてきたら音を出したり、くるくる回すと音を出す鳥のおもちゃは、いったいいつごろからあったものでしょうか?

たくさんの紙つばめが田の畔で風になびく姿はさぞかし壮観だったことでしょう。
また、一年に一日だけ、継鹿尾観音の例祭でしか手に入れられなかったということは、その季節を待ちわびるということもまた、どんなに楽しかったかと想像されます。





2 件のコメント:

  1. へ〜!こんなのがあるんですね。愛知県に54年も住んでいながら初めて知りました。こんな鳥よけ燕が田んぼにある光景、見てみたかったです。昭和40年生まれで名古屋市に生まれ育ちましたが一度も見たことがないので犬山市に限ったものだったのでしょうかね。寺院には大人になってから数回足を運んでいますが、木製の七福神みくじが置いてあるのは知っていますが、この燕は出会ったことがないです。一年に一度と書かれているので機会があれば手に入れたいです。なんか吉報を運んでくれそう〜♪

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  2. hattoさん
    かつて神社仏閣の授与品や門前で売られたものは、ほとんど1年に一度と限られていましたが、今では、残っているか、あるいは復刻したところはどこでも、いつでも手に入れられるところが多いです。東海村の板馬もそうでした。
    紙つばめは、寂光院で社務所に声をかけると売ってくれるようです(http://www.jakkoin.com/oshirase09.html)。ぜひ行ってみてください。東海村の村松山虚空蔵の馬や船も、ほかのお守りに比べて、ほとんど目につかないように置いてありましたが(笑)、何故でしょうね。飛ぶように売れてもつくるのが追いつかないのかもしれません。まぁ、飛ぶようには売れないか(笑)。そう値段を高くは設定できませんしね。
    この形の鳥は振り回して遊ぶものだとばかり思っていましたから、風が吹いてきたら一斉に飛んで音を立てるなんて、想像もしていませんでした。雨にあたると壊れてしまうと思われますが、冬が去って春が来た、今年も種籾を蒔くことができたという喜びの表現だったのでしょうね。わくわく感が伝わってきます。

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