2色の糸を絡ませながら、織っていくトワイニング(日本語ではもじりと言う)という技法を練習したあと、次は地を平織りで押さえながら差し糸で模様を出すスマックという技法を練習することになりました。
もともと経糸(たていと)には、順番が狂わないように、交互に棒を差してありますが、これを「綾棒」と言います。
これまでの、経糸をいちいち指で拾い、そこに色糸を巻きつけるトワイニングの練習が終わり、平織りをしながら色糸を差す、スマックという織り方を練習するために、綾棒を、平織りしやすいものと差し替えました。
1本は、経糸を1本おきに開くときに立てると、経糸の間に十分な隙間のつくれる、幅のある綾棒(Aとする)を使います。
このような幅のある綾棒を2本入れても、経糸の上下を交互に変えることは、物理的にできません。そのため、もう一つの綾には、糸綜絖(いとそうこう)をつくります。
糸綜絖(Bとする)は、もう1本の綾棒が拾ったのとは反対の経糸に、ゆとりをもって糸をひっかけたもので、糸綜絖に通した経糸を上に持ち上げたいときは、棒を持って引っ張り上げて、できた隙間に刀杼(とうじょ)を差し込んで経糸を開き、そこに緯糸を通します。
これは、幅のある綾棒Aを立てて緯糸を通したところで、糸綜絖にはゆとりがあるので、まったく邪魔をしません。
そして次に、綾棒Aをできるだけ遠ざけておいて、糸綜絖Bを持ち上げて、経糸が開いたところに刀杼(この場合は竹の物差し)を通して立てて、隙間に緯糸を通し、これを交互に繰り返します。
こうやって、差し糸(色糸)を1段手でくぐらせては、平織りで留めていきます。
ところで、幅が狭い織り機で平織りをするために、Kさんからこんな板杼(いたひ)をお借りしました。
すごい!見たことのない板杼です。どこがすごいかと言うと、板杼の中ほどに小さな穴を開けてあることです。
その昔、Kさんがスウェーデンのとある織物工房で求められたそうです。
板杼を裏から見ると、糸はこんな感じに巻いてあります。織り進むにつれて糸を杼から解いて行くのですが、
威力を発揮するのは中断したときなど、杼から糸がほどけてしまいません。
通常、幅が広いタペストリーの場合は、両端に糸をひっかけることができるようにつくられている板杼(これも北欧形)を、そして幅が狭いものの場合、指に引っかけてまとめた糸(蝶の形になるのでバタフライと言う)やあばりを使いますが、糸を巻いた板杼やあばりを持ち上げると、簡単に糸がほどけて、もつれたりして面倒なことになってしまいます。
色糸は、指でくぐらせるので、どれも杼を使わず、バタフライにまとめています。