『FISHES OF THE CAMBODIAN MEKONG』(FAO[国連食糧農業機関]、1996年)は、メコン川のカンボジア域内に生息する魚をイラストや写真で掲載している、興味深い本です。
メコン川は、中国源流で、ラオス、ビルマ、タイ、カンボジア、ヴェトナムを経由して東シナ海にそそぐ、全長4,400キロの大河、生息する魚種は1,100を超えますが、ラオスとカンボジアの国境近くにあるコーンの滝の上下では、魚種の違いも見られます。
表紙絵の右にかかれている大きな竹で編んだ筌(うけ)は、実際に漁労に使うものですが、船に乗っていて岸辺に置いてあった実物見たときは、人も入れそうなその大きさにびっくりしたものでした。
上は乾季のメコン川とその支流の地図です。
ラオス、ビルマ、タイ、カンボジア、ヴェトナムを流れる支流も描かれています。上から3分の一ほどのところの真ん中に描かれているのはトンレサップ湖です。
雨季には、降る雨と上流からの水で川は増水し、遊水地が冠水します。遊水池には一定期間増水した水がとどまり、やがて引いて行きます。2週間ほどしか冠水しないところもあれば数カ月冠水するところもあり、中でもトンレサップ湖は乾季にも干上がらない、メコン川の最大にして最深の遊水地です。
魚によっては、遊水池で産卵するものもいます。木陰や積もった落ち葉を利用して産卵し、孵化した稚魚たちは流れの穏やかな、食べ物のたくさんある場所で育ち、やがて減水とともに本流に帰ります。
プノンペン育ちの若い女性が、夫が海辺のシハヌークヴィルで仕事をするので、シハヌークヴィルに住むことになったものの、夫を置いてプノンペンに帰ってしまったという話がありました。どうしてかと訊くと、シハヌークビルでは川魚が食べられない。海の魚はもう食べたくない、とのことでした。それほど、川魚はカンボジア人の親しんでいるものです。
余談ですが、それと反対に、私の祖母は瀬戸内海の漁師町育ち、小さいころから海の魚に親しんできたせいで、川で採れたフナ、ウナギ、コイなどは、生臭いと言って決して口にしませんでした。
さて、川魚は、雷魚やナマズのように生のまま調理しても食べますが、干物にしたり、魚醤(トゥックトライ)にしたり、いろいろな保存食にして使ってきました。
メコン川には、川エイもいます。
プラホク(魚醤)づくり。写真が見つからなかったのでSTAR CAMBODIAからお借りしました |
季節になると、カー・リン(鯉科の魚)を誰でも捕ってよく、川や湖の周りは家族総出で、泊りがけで繰り出した人たちで大賑わい、プラホクやトゥック・トライ(どちらも魚醤)をつくります。
トンレサップ湖が呼吸していると話して下さったプノンペン在住の方が、丁度今日のメーリングリストで湖を時計回りに旅した様子を届けてくれました。
返信削除きっかけは「日本国のODAによって改修工事が長いこと続いていた国道5号線、プノンペンからバッタンバン(そしてその先のタイ国境ポイペトの町)を結ぶ、が遂に整備完了で、先日開通式が開かれたというニュースがあったからです。」との事。
この方はODAの教育支援中のルワンダで交通事故に会い、下半身不随となりました。現在はカンボジア人のお連れ合いの介護を受けながらプノンペンで暮らし、時々日本に来られます(もしかして春さんご存知かも)。シェムリアップに水族館ができたそうです。
reiさん
返信削除あいにくその方には心当たりがありません。
政府関係の仕事をしていてカンボジアで長かった人は数人知っているだけで、心当たりの方のFBを見てみましたが、交通事故に遭われていませんでした。
プノンペンからポイペトまで道が整備されたなんて、想像もつきません。橋もできて、港も整備されて、今度は鉄道の整備でしょうか。
シェムリアップに淡水魚の水族館ですって!隔世の感がありますね。
カンボジアに行ってみたいような、行ってみたくないような、複雑な気持ちです(笑)。まぁ、最初に訪れてからすでに四半世紀経っていますから、変わってもおかしくないのですが。
お名前は村山哲也さん、著書 http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/1136.html も出版されています。
返信削除reiさん
返信削除やっぱり存じ上げませんでした。
機会があったら読んでみたいと思います。