今回のタイ旅行で、久しぶり(30年ぶり?)に訪れた週末市場は、きれいに区画整理され、「ただの市場」と化していました。
かつて、週末市場が王宮前広場で開催されていたころ、生きた珍獣も売られていたし、生藥、まじないに使うわけのわからないもの、大衆芝居のお面などが売られていて、全体に混沌としていて面白く、見ているだけでわくわくする異次元の世界でした。
それが、王宮前広場では手狭になったこと、お手洗いなどの設備もないので不潔だということなどから、都心を離れた郊外のチャトチャックに移転したのは1982年でした。
もとの雰囲気はなくなったものの、1980年代末になると、おしゃれな人たちの手づくりの店(ヤシ砂糖、アロマ品、雑貨などなど)が並ぶようになり、それはそれで素敵でした。
当時買った、初めてタイで見かけた高さ26センチの招き猫。中国製と思われますが、丁寧につくられています。これまでUPしたことがなかったようでした。その後、路上でタマ招き猫の時計を見たりしました。
私の関心はもっぱら骨董屋さんですが、そのころの骨董屋には鎖国が解かれたビルマやカンボジアからのものなどが増えて、活気を呈していました。
ところが今回行ってみて感じたのは、どの店も個性がなく、骨董店ですら見るべきものはありませんでした(太い道路を超えたところにビルがあって、骨董屋が常設しているという話を親切なお店のお兄さんから教えてもらいましたが、行きませんでした。そこはどうかな?)。
というわけで、今回のタイ旅行では何も買わずに帰るつもりでしたが、帰国の日の前日、スクンヴィット通りの家具屋さんを回っていたとき、夫が突然、
「近くの骨董屋に行こうぜ」
と言いました。お土産を見たいと思ったようでした。もちろん私に異存はなく、一番近いとネットに出ていた、「ポールの骨董店」に行きました。名前からして、西欧人のやっている店です。
通りから奥まったどん詰まりの広い一軒家が丸々骨董店で、品ぞろえも多く、籠もいろいろありましたが、多くが山地民のつくった籠の中、平地民(?)のつくった魚籠(びく)に目が行きました。
張った胴を一度絞って再び開いたつくりの、おおらかな魚籠です。
緯材(よこざい)のひごは、皮を残して細くつくり、3目飛ばしの綾で編んであります。
底は2目の綾に四角く編み、底材がそのまま経材(たてざい)となって16本ずつで胴へと立ち上がると、16×4=64本になりますが、それを3本飛ばしの綾に編んでいくと、2段目で1目ずれていきます。なんと頭のいい編み方でしょう!経材を足す必要もなく、そのまま編み進められます。
タイには空洞の竹と中まで詰まった竹がありますが、足には空洞のない竹を使い、突き刺してありました。
ひごもすべて、空洞がない竹を使っているのかどうか? その可能性は高いものの不明です。
蓋も面白い。皮のついていない薄い竹で編んでいます。
紐はヤシの繊維を縄にしたものです。
パルメラヤシだと思いますが、ココヤシでも似た繊維が取れるのか、いずれにしろ固いのにしなやかでけば立たない、素敵な紐です。
蓋はきちっと閉まりますが、買ったとき店主がしっかり閉めてくれすぎて、開けるのに苦労して、マイナスドライバーを使わなくてはならなかったので、きっちり閉めないでおこうと思っているところです。
もっとも最初見たとき、私は開けられなかったのに店主は手だけで固い蓋をこじ開けていました。そのせいかどうか、縁の巻き編みの竹が2本ほど切れています(3枚目の写真)。
蓋が凹んていることにびっくり。でもきっちりはまり過ぎると困りますね(苦笑)。
返信削除hiyocoさん
返信削除自分に厳しく良いものをつくろうと手を緩めない職人さんが、かつてはどこの国にもいましたね。納得のいくものをつくった、という感じです。