カンボジアの丸い箱です。
経文入れと同じように、籠を下地にして漆を塗る籃胎(らんたい)の技法でつくってあります。
籃胎の技術は、インドから、ヒンドゥー教や仏教とともに、ビルマ、タイ、カンボジアなどに伝播しました。さらに日本にも、東南アジアから琉球経由で伝えられています。
直径31センチの、比較的大きな箱です。
ビルマには、下地がすべて細いひごで編まれた籠でできた、
みごとな籃胎がありますが、カンボジアの箱は、籃胎といっても、籠が使われているのは側面のみです。
装飾や補強をかねて、籠の上下に木をまわしたり、ラタンをまわしたりしています。
蓋がかぶさる部分は、籠ではなく、へぎ板でできています。
外から見ると、へぎ板の継ぎ目が見当たりません。
しかし、内側から見ると、つないであるところがわかります。つき合わせただけで、上手につないであるものです。
カンボジアの箱は、赤、黒、金などの色使いが特徴ですが、蓋の内側のデザインも独特です。
黒いところと灰色に見えているところを分ける赤い線は、蓋の外側のつくりと関係なく、バランスのいいところに引いてあります。
閉めていると蓋の内側は想像できませんが、開けるたびに楽しめるという趣向です。
見えないところに凝る、日本の羽織裏に通じるものが感じられ、その心意気に拍手を送りたくなります。
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