2010年3月7日日曜日
キンマの道具入れ 続き
日本では、漆を重ねて厚く塗り、それに線彫りして、その上に別の色の漆を塗って拭き取ると、線の中にその色が残って、模様になる漆塗りの方法を、キンマ(蒟醤)塗りと呼んでいます。
これが、日本でキンマ塗りと呼ばれる手法でつくられた、ビルマの籃胎(らんたい)のキンマの道具入れです。
籃胎とは、下地を竹で編んで、その上に漆を塗る方法のことです。現代の日本では、竹という自然素材を下地に使ったことがわかるよう、籠に薄く漆を掛けたものが籃胎の主流ですが、もともとは、薄くて、軽くて、丈夫な下地が欲しいことから生み出されたものですから、竹の編み目を見せたりはしません。
これらのキンマの道具入れは、下地は細い細い竹ひごで編まれていますが、押すと、しなることぐらいしか、竹であることを感じさせるものはありません。赤い花模様のものには、中に、一段、浅いお皿が入っています。
桃山時代に、堺の港にもたらされ、茶人に愛好されたことから、日本では、ビルマの籃胎の漆器が知られるようになりました。日本語のキンマは、プルー(Piper betele L.)の葉のことも差していますが、そこには、ちょっとした誤解があります。「キンマ」という語は、タイ語のキン(食べる、転じてたしなむ)+マーク(ビンロウ)が基になっていますが、キン・マークの「ク」は強く発音されませんので、日本人には、キンマーと聞こえます。だから、なぜか日本語になじみやすい、キンマの言葉だけが耳に残り、伝えられたもののようです。
花模様のキンマの道具入れは、黒く塗ったものに、線で花模様を彫り、赤い漆を塗って、拭き取って、模様を出したものです。
こちら、朱色のものは、高さが18.5センチ、径が21,5センチです。中には、お皿が2枚も納まっています。厚みは、1.5ミリくらいしかありません。竹で編んだ下地は、編み目が見えなくなって、平らになるまで、下地用の漆を塗ってあるわけですから、その竹ひごがどんなに細くて薄いか、想像がつくというものです。
私はお猿の模様だと思っているのですが、なんでしょうか?写真はよくないのですが、模様は線彫りしたところに単色を塗って、拭き取っただけでなく、合計3色、朱色、黒と淡黄色が見えます。そして、地の朱色も、あとで削り取って光沢をなくしている部分もあるので、とても複雑な色合いを出しています。
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