2010年3月5日金曜日

ソマリアの木彫り



収納場所がないのに、倉庫を壊すので、整理しなくてはならない悲しさ、とくに膨大な数の写真はどうすればいいのでしょう。夫は、自分の小さいときの写真など、スキャンして、コンピュータに取り込みはじめました。
それにしても、写真を本気でコンピュータに取り込んでいたら、何日も、何ヶ月もかかってしまいそうです。しかも、取り込んだからといって、元の写真は全部、捨てられるでしょうか?

20数年前のソマリアを訪ねたときの写真が出てきました。背の高い人たちです。この写真には女性は写っていませんが、女性はちょっと丸顔で、アフリカでも有数の美人揃いです。
今では、海賊として有名になってしまったソマリア人。遊牧民族で、たくさんの口承伝承を持つ人々。したがって、口が立つ人々。しかし、押しは強いけど、家族思い、友人思いの優しい人々です。
ソマリアは、すでに長いあいだ無政府状態にあります。今どき、政府がなければ、元遊牧民であっても、交易もままなりません。民族グループ間の対立もあるし、残念ながら、まだまだ彼らに安らぎの日々は訪れそうにありません。




ソマリアは海にも面しているのですが、国土のほとんどは乾燥地帯です。一年にほんの数日雨が降り、そのとき植物はいっせいに芽吹きます。そして、あとの長い乾燥した日々を、葉をつけず、太いトゲに水分を蓄えて生き延びます。トゲは植物を、ヤギやラクダからも守ります。

ソマリア人は木工がたくみです。これは、二枚貝の形をした、ラクダの首につけるベルです。どうして、沙漠の中を歩くのに、貝の形のベルなのでしょう? 聞き忘れました。
ナイフ一本だけで、木をくり抜くのはたいへんな作業です。缶詰の空き缶など利用して、簡単に音を出せばいいのにと思ってしまいますが、そこが彼らの美学なのでしょう。
中に木の細い棒が、一本か二本、ぶらさげてあり、とてもいい音がします。モガディッシュの道具屋さんで買ったのですが、どのベルも、ラクダと長い旅をしてきたのか、風と砂に晒されて、木目がくっきりと現れています。




ブリキで丁寧に補修しているベルもあります。




右のベルも両脇を補修してあります。中にぶら下げる木も、つけ替えた、新しいもののようです。ハマグリが足を出しているようでもあるし、口から舌を出しているようでもあります。




こちらは手つきの椀で、白っぽい木に赤茶色の染料が塗ってあります。市場で買った新しいものでしたが、我が家ですっかり古びてしまいました。




ラクダのミルク入れです。これにミルクを入れてラクダにぶら下げ、日がな一日歩いていると、ミルク入れの中のミルクがちゃぽちゃぽゆれて、自然に、バターとミルクに分かれるんだったように記憶しています。これも、木をくり抜いてつくってあります。




蓋を取ったところ、蓋の中も、きれいにくり抜いてあります。




そして、痛み易い縁のところは、細かく蔓のようなもので編んで、それをまた針金で抑えています。蔓は中まで通っていますが、針金は通っていません。外だけです。みごとな細工です。
道具も満足にはないだろう状況でつくられた、このようなみごとな細工を見ると、人の手は、いったいどれほどの可能性を秘めているのかと、驚いてしまいます。



そして、お土産物のスプーン。彼ら自身で使うものに比べると、ちゃっちゃっとつくってありますが、とても使いやすい形をしています。

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