骨董アンタイディーのかしわばらさんが、面白い本を手に入れたとブログで紹介されていたのは、『独逸の民藝』(コンラード・ハーム著、独逸文化研究會丸山武夫譯、海南書房、1942年(昭和17年))でした。
ネット時代のありがたさ、調べるとすぐ見つかって、しかも戦前の本なのに値段も安い、早速手に入れてみました。
128ページの本文には、木工、織り物、陶芸などの工芸に限らず、民間信仰から建築まで多岐にわたって書かれていて、それぞれに興味深いイラストが添えられています。
また、216ページにわたる写真は圧巻で、ドイツ各地の民俗学博物館の収蔵品や建物などが紹介されています。重厚な木彫りの戸棚や長持、椅子、ベッド、ゆりかごなどの家具、お菓子の型、桶、塩入れ、ビアマグなど台所周りのもの、織り物、編み物、刺繍など手仕事の道具だけでなく、その作品の数々、ハウスキーピングの道具などなど盛りだくさんで、初めて目にするものもたくさんありました。
それにしても、発行年が昭和17年、ちょっと気になります。
日獨伊三國閒條約を結んだのが昭和15年9月、真珠湾攻撃が翌16年12月、17年といえば第二次世界大戦の真っただ中です。
同盟国ドイツの民藝の本を出版するにあたって何か意図があったのか、なかったのか。なかなかの豪華本で、定価は八円です。
イラストにも写真にも、それぞれキャプションがついていていますが、横書きは右から読むということに、なかなか慣れません。
うっかり左から読もうとしてしまって、意味が取れず気がつきます。しかも日本文中の原文表記だけは、左から読みます。
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陶器売り、鍋か? |
ともあれ、知らなかったヨーロッパの生活を知る、興味深い一冊です。
日本では天秤棒で売り歩いた陶器は、ドイツでは背負子で担いでいます。
北欧固有のものだと思っていた、
紐織り機が、ドイツにもありました。
もっとも、北欧でつくったものがドイツの家庭生活に入り込んでいたのかもしれません。なにしろ、ドイツは北でデンマークと接しているのですから。
この織り機は、糸(黒く見えるのが糸)が掛けてあるので、経糸(たていと)を穴と溝に一本おきに通している様子、紐にすると細くなる様子などが、よくわかります。
この本ができたよりさらに昔には、この織り機で織った紐は、ヨーロッパでは服を着るときの必需品だったのかもしれません。
これは長持に描かれている、織り物の下準備の絵です。
真ん中の絵は麻糸を紡いでるのだと分かりますが、両脇はよくわかりません。
とくに右の女性、
「何やっているんだろう?」
と、何度も見返したのですが、わかりませんでした。
この頭は、頭痛除けのためにつくって、聖コロマン礼拝堂に奉納したものだそうです。
日本の絵馬のようなものでしょうか。
根気を詰めて頭をつくっていたら、もっと頭痛がひどくなりそうです。
おもちゃもいろいろあり、クリスマスのおもちゃなど、興味津々です。
これは小さい木馬ですが、大きくて子どもが乗って遊ぶ木馬も紹介されていました。
そして、これ!美しい、長い曲木の箱です。
箱に、この馬行列の飾りはついているのでしょうか?
この箱を見るだけのために、ニュルンベルクのゲルマン博物館に行ってみたいくらいです。