2018年10月5日金曜日

箱と籠


倉庫を片づけていたら、カンボジアの箱とフィリピンの籠、それに文房具などが段ボール箱から出てきました。夫のものです。

夫はいつも、いちいちその場で片づけるのを嫌がります。すぐ手の届くところにいろいろ置いておいて、すべてが終わったとき、一気に片づければいいやという考えです。
電気工事をするときなど、その方法はそれなりに効率がいいかもしれませんが、文房具には一段落がないので、一気に片づける機会はいつまでもやって来ません。
たぶん、何かの折に邪魔になり、まとめて段ボール箱に入れて、とりあえず目に見えない場所にしまって、早、数年経ってしまったというわけなのです。

作業棟の軒下など、あちこちにそんな、夫が手あたり次第詰めた箱があります。
夫のものだけでなく、うっかりしていると私のものも詰められてしまいます。誰かが来るときなどに、手っ取り早くそこいらにあるものを適当に箱に押し込め、目立たないところに置いて、そのままになってしまうので、いろいろなものが見えなくなってしまいます。


カンボジアの木の箱は、薄い板をつくり、それを樹脂を接着剤として木(か竹)の釘で留め、漆を塗ってあります。今でこそ、機械で薄い板をつくるのは造作ないことですが、手の道具だけの時代は、薄い板をつくることも大変なことでした。
長方形の木の箱は、プノンペンの骨董市場などではわりあいよく見かけるものでしたが、状態が良にものとなると、限られていました。
蓋が丁番でくっついているもの、ラタンで装飾を施したもの、木彫りを加えたものなど、いろいろです。四角い箱も楕円形の箱もお隣のタイでは見かけないので、長くカンボジア固有のものと思っていました。
しかしのちに、もしかしたらフランス人の持ち込んだ「ヨーロッパの形」ではなかったかと思うようになりました。
というのも、フランスや北欧に、わりとよく似た箱があるのを知ったからです。

箱だけでなく、折り畳みの椅子も、かつてはカンボジア固有のものと思っていましたが、どうもフランスに似たものがあるようで、これも植民地の名残かと思いました。
ものはいろいろな形で伝播していくようです。


さて、北ルソンの籠は、丁寧なつくりです。
これは長くフィリピンを支配した、スペインやアメリカからもたらされたものではなく、広義の「マレー」の形や技です。
広義のマレーとは、台湾からマダガスカルまでに住む海洋先住民族のこと、共通の文化を持っています。


底は太いラタンで組んで、


立ち上がるあたりからラタンを二つに裂いて、ここからは細くして、しなやかさと美しさを優先させています。


そして、網代編み(綾編み)で縁へと上っていきます。


縁は折り返して、端を見せないように内側から太いラタンをあてがい、別のラタンでかがってあります。


どれだけ手がかかっているのでしょう!
それは縁だけでなく、紐を通すための輪にも言えます。
縁の下がくびれているのだから、ただ紐を結ぶだけでもよかったのに、編んだ帯を回して、四か所にラタンで編んだ小さな輪を取りつけています。

この箱や籠を見ていると、時間をお金に換算してつくったものたちは、お金に換算しないでつくったものには到底かないっこないなぁ、と思ってしまいます。






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