トルコの手工芸品を扱っているネットショップから、「今日が30%OFFの最終日です」というメールをもらって、ついつい、
「どれどれ」
とのぞいてしまいました。30%OFFの上、送料も無料、使うこともないと思うけれど織物の道具だしと、キリムを織るときの打ち込み道具、キルキットを買ってしまいました。
木の柄の先に切り込みを入れて鉄板をはめてあります。
写真はトルコではなくセルビアのキリム |
キリムなど綴れ織りは、緞通(だんつう)のように常に水平に1段ずつ織り進むのではなく、下に図案を置き、図案に沿って色ごとにでこぼこと織り進んでいき、織り終わりにはまっすぐに整えます。そのため、緯糸(よこいと)を経糸(たていと)にくぐらせた部分をしっかり打ち込むとき、巾のさして広くない打ち込み道具の方が適しています。
鉄板は5枚、鉄棒(リベット)を突き刺して固定しています。
鉄板を差し込むために鋸でつけた切れ目が不揃いなところに、村の鍛冶屋さんの仕事らしさが見えます。
ネットショップの写真を見ると、もともとは5本ほどあったキリム用キルキットは、私が買ったのが最後の1本だったようで、SOLD OUTになって、画面上から消えてしまいました。
まにあって、よかった!
トルコのエーゲ海地方 |
このキルキットは、エーゲ海地方の、絨毯で有名なウシャクの山村で使われていたのと同じ形のものです。昔は各戸でキリムを織っていたので、どの家にもあったキルキットですが生活様式が変わって、今ではキリムを織る人がいなくなり、キルキットも失われ、これはショップのオーナーが、村の鍛冶屋さんに再現してつくってもらったものだそうです。
緞通を織るには大掛かりな縦機(たてばた)が必要ですが、キリムを織るには、経糸(たていと)を張ることのできる簡単な枠があればいいし、枠は持ち歩けるし、みんなで集まっておしゃべりしながらでも織ることも出来ます。
こんな豪華なキリムは熟練した織り手によるものですが、村の家々で防寒のために必要に迫られて織られたキリムも素朴で素敵だったことでしょう。
トルコのキルキット、いろいろです。
ところで、ほかの地域では緯糸を打ち込むのに何を使っていたのでしょう? その昔、私が織りものを習った先生はノルウェーに留学して織物を学ばれた方でしたが、教えていただいたのはディナーフォークを使って打ち込むこと、綴れ織りの盛んな他の北欧諸国でもディナーフォーク(かそのようなもの)を使っていたのではないかと思います。
西陣つづれ織保存会の写真をお借りしました |
そして、日本の西陣では、羊毛より細い絹糸を使うこともあり、江戸時代から爪掻本綴織(つめがきほんつづれおり)という方法がとられ、打ち込み道具を使わず、ギザギザに切り込みを入れた爪で緯糸を整えてきました。
リンク先のベドウィンの長い敷物を持ち帰った話に圧倒されました(笑)。畳1枚より長い!
返信削除西陣織の職人の爪が櫛状になっているのはテレビで見たことあります。日常生活で何か引っ掛けたりして不便ではないのかなぁ。
hiyocoさん
返信削除手が抜けそうでした!長くて重いのを畳んで、しかも2枚をひもで縛って、でもしっかり抱いて(笑)。まだ、飛行機旅はいいけれど、成田からの京成電車の中と上野についてからが最悪!よくやってました(笑)。
西陣の人、やすりで爪をギザギザにしていますね。女の人はストッキングとか履けないだろうなぁ。