2018年11月10日土曜日

鞴祭(ふいごまつり)

友だちに誘われて、母校の鞴祭(ふいごまつり)に行ってきました。
母校の門をくぐるのは28年ぶりかと思いましたが、帰りにキャンパスにそびえるムクロジの木を見て、なんだ、7年前にムクロジの実を拾いに来たじゃないかと、思い出しました。

神職の祝詞が終わって、玉串奉納中

鞴祭は、毎年11月8日(もとは旧暦)に、開催されます。
かつては、鞴を使う鍛冶屋、刀工、鋳物師(いもじ)などが、仕事を休んで金山彦神、金山姫神、お稲荷さまなどに詣でて、安全を祈願したものでした。

大学の鞴祭は、鍛金、彫金の部屋でも行われていましたが、直行したのは鋳金の工場(こうば、鋳型をつくったり鋳込んだりする作業場教室)でした。
鋳物とは、鉄、真鍮、ブロンズ、アルミニウムなどの金属を、坩堝(るつぼ)で溶解して、それを型に流し込んでつくる製法で、鞴は、金属を溶かすときの必需品です。
私が在学していたころの工場はもっと手狭で、鞴祭は先生と学生など内輪だけ、甘辛両刀遣いの上級生の男性がいて、彼がお汁粉を大鍋いっぱいにつくってそれを肴にお酒を酌み交わし、しこしこと行っていました。2003年に今の、大きい工場をつくってから盛大なものになったようで、卒業生、在校生などで部屋はあふれかえっていました。
んっ?工場の片隅に、ピッツァを焼く、石窯までありました。
母校での鋳金の歴史は、130年になろうとしているそうです。かつては工場は女人禁制でしたが、1960年代から女子学生も登場、今では7割が女子学生とか、若い男性は見渡しても少なめでした。
時代は変わるものです。



現代では、機械で送風しますが、しめ縄の奥の、「鞴神」と書かれた紙を貼ってある、大小の木の箱が、かつての鞴です。いつ頃まで使われていたのでしょう?

鞴祭で、図らずも恩師の息子さん(鋳金作家)と再会しました。


これは、我が家にある唯一の、西大由先生(1923-2013)の作品です。
「こんなものをおれの作品と言うな」
と、草葉の陰の先生からお叱りを受けるような、先生が渾身の力を込めてつくられたものとは違う、遊び心でつくられたものですが、私的には好きなものです。
丸の歪み方にさえ、「西先生らしさ」がにじみ出ています。


これは、日本に初めてコアラが来たとき、それを記念して多摩動物公園がつくったものです。
多摩動物公園の裏門近くにあった我が家に、何度か立ち寄られた西先生から、幼かった息子たちへといただいたものですが、桐の箱に入っていましたから、コアラ歓迎の式典で、関係者に配られたものだったのでしょう。

なぜ、多摩動物公園の記念メダル作成に西先生がかかわられたか、それは「カバ園長」として有名だった、東武動物公園の初代園長の西山登志雄さん(1929-2006)と西先生が、親友だったからです。西先生は学生時代に、学校の隣の上野動物園でアルバイトをされていて、そこで飼育員だった西山さんと出会われています。

と、ここまで書いて疑問発見、多摩動物公園の隣にあった家に、私たち家族が住んでいたのは1970年代、79年までですが、このメダルには1984年と書いてあります。
1980年代になってからも、お正月には何度も西先生のお宅にうかがいましたが、お正月の集まりはいつも大勢で、お酒も入り、わいわいしたもので、とてもその席でこれをいただいたとは考えられません。

もしかしたら、コアラの食べ物であるユーカリの木を植えて育てる試みなどどともに、式典で配られる記念メダルも、受け入れの準備として、1970年代にすでに「試作」されていたのかもしれません。
ヤフーオークションの「#多摩動物公園」で検索すると、画像は出てきませんでしたが、「西大由作 鋳金【1984年多摩動物公園 コアラ来園記念記念メダル」という文字がありました。ということは、この記念メダルは試作で終わったのではなく、実際につくられたと考えられます。



ちなみに、動物公園で市販されているメダルはこちら、えらい大違いです。







4 件のコメント:

昭ちゃん さんのコメント...

春姐さんと治金がどうしても結びつかないけれど
何でもこなすところを見ると納得です。
農機具が専門店で発売されるようになり鍛冶屋はめっきり少なくなりました。
 現役時代歪取りや焼き入れは任されリタイヤして
化石採取用のタガネは自分で焼き入れでした。
 炭窯も新春には炭窯祭り山仕事は休みます。

さんのコメント...

昭ちゃん
そうか、炭窯も火の神さま、窯の神さまに感謝をささげますよね。とっても大切な神様ですもの。
でも、大工をやってみて、大工も、植木屋も、樵も、すべてすべて刃物をうまく砥げるかどうかが、決定的な意味を持つことを知りました。
この前ふらっと立ち寄って庭木の剪定してくれた近所の植木屋さん、作業中にも剪定ばさみを砥ぐと言っていました。その方が自分の手にやさしいからだそうです。

その研ぎがよくできない私は、いつまでたっても半人前以下です(涙)。

hiyoco さんのコメント...

学校の中に鋳物工場があるなんて驚き!さすがですねー。そして老若男女集まるのも素敵です。
ヤフオクのコアラのメダル、写真はかなりスクロールした下の方に載っているので、たぶん春さん見逃していますよ(笑)。https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h352325897
ヤフオクのものと春さんがお持ちのものは型は同じっぽいのですが、輝きの違いは経年によるものなのか素材の違いでしょうか?
最後の安いメダル、笑えました!

さんのコメント...

hiyocoさん
わぁすごい!見つけるなんて!
しかも、量産品とはいえ、たった1000円で売れてないなんて!(笑)。地金代だってもっとするかも。ありがとうございました。
まぁ、鋳金専攻なんて、今は大きな仏像や銅像の建設もないし、お寺の梵鐘をつくることもないし、どちらかと言えばやってられない職業ですね(笑)。
工芸科に入り、二年生で各専攻に分かれるのですが、新人は6人くらいの女子と1人の男子でした(爆)。将来はアクセサリーかなんか作るのかな?それだったら彫金を専攻した方がいいかもしれない。と、他人の心配はせず、自分のことを考えます。