2011年7月24日日曜日
猫に見る、バリの木彫りの変遷
インドネシアのバリ島は、木彫りの盛んな島です。
人々は、島に生えていたナンカの木(ジャックフルーツ)に神様を彫ることで腕を磨き、その高い技術を親から子へと受け継いできました。
木彫りの神様はやがて、増えた観光客にもてはやされるようになり、バリ島のナンカの木はほぼ切りつくされてしまいました。
まだ日本人観光客がほとんど足を向けなかった、30年ほど前の、バリの木彫りの猫です。
神様とは、木彫りの技術がぜんぜん違うものですが、色あいといい、表情といい、バリらしい猫です。
日本人観光客が増え、日本の雑貨店でもバリのものをよく目にするようになった15年ほど前、神様より、猫などのお土産物の木彫りの方がすっかり主流になりました。
当時、釣竿を持った猫を、よく見かけました。
どれも、別々なときに別の場所で買ったり、お土産にいただいたりしたものです。
この頃から、バンコクなど東南アジアの街々にも、バリの雑貨を扱うお店が出てきました。アセアンの域内流通です。
魚釣り猫は、タイの週末市場で見つけたました。
棚の端などにちょこんと腰掛けさせる、バリの木彫りの動物も、巷にあふれるようになりました。
雑貨屋さんだけでなく、いろいろなショールームや、ショーウィンドウなど、どこにでも腰掛けているのを見かけます。
このあたりの農家で、
「まあ、ちょっと上がって行けや」
と言われて家に入ると、よく飾ってあるのは、こけしや、鮭をくわえた熊の木彫りではなく、バリの木彫りの動物だったりします。
そして、現在のバリ製招き猫です。
「えっ?」
この顔は、中国製の100円ショップで売っている招き猫と、そっくりです。
バリ猫も、最近では完全に無国籍猫になってしまいました。
これは、グローバリゼーションと呼ぶべきものでしょうか?
「笑ってればいいってものではないのよ」
と、木彫りの猫たちに言い聞かせてみても、ただニコニコ笑っているばかりです。
以前は、笑っている動物の木彫りなんて、まったく見かけませんでしたのに。
思えば、ナンカの木に彫った神様から、遠くへ来たものです。
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