2021年2月10日水曜日

今戸の貯金玉


いまどきさん(吉田義和さん)から、人形が届きました。久しぶりです。
いまどきさんは、いつも忙しくされていますが、とくに干支の動物をつくったり、鉄砲狐を神社に収めたりする年末は、毎年お気の毒なくらい忙しくされています。
そこで、注文するときはいつも、できたとき次第ということでお願いしています。瓜に乗ったウリ坊は2019年の干支人形ですから、2018年後半期に数をつくられたもの、たくさんつくるのも大変ですが、さりとて数体しかつくらないのはもっと大変そうですが、つくってくださいました。

東京(江戸)の今戸焼の人形は、関東大震災や東京大空襲で、焼かれたり、がれきに埋もれたりして、その多くが失われました。いまどきさんは、それらの発掘品からも型を起こされています。また、東京の土にこだわり、色も蘇芳やキハダなど、当時の顔料にこだわっていらっしゃいます。



ほとんどは古作の再現ですが、干支人形をつくるのに完全なモデルがない場合、今戸焼のテイストを大事にしながら、ご自分で型を起こされることもあります。この瓜に乗るウリ坊も、そんな一つだったと記憶しています。地口のような人形です。


いまどきさんは、おもには金澤春吉翁(1868(明治元年)ー1944年(昭和19年))の人形を踏襲されていますが、江戸から昭和初めまでの今戸には生活雑器をつくるかたわら、人形をつくった方も大勢いらっしゃいました。これはそんな、作者不詳の招き猫の貯金玉です。
お願いしたとき、
「ニスを塗ったのにしますか、塗らないのにしますか?」
と訊かれたので、どちらとも決められず両方でお願いしました。今戸には珍しい、てっかてかに光る猫が届くと思いきや、そうはなりませんでした。ニス仕上げ(右の猫)をしているのは前垂れと、ぶちの黒いところだけでした。


お金を入れる穴が、頭に開いているのと背中に開いているのがありましたが、背中の穴はいまどきさんの遊び心でしょうか?
左の招き猫は、リボンが目と鼻、穴が口で、背中に顔が見えてしまいます。


今戸焼の貯金玉は、いったいどのくらい種類があったのでしょう?
左の貯金玉は「寺島風(寺島町の高野安次郎(生没年不明)作)」の貯金玉、右は「尾張屋風(金澤春吉作)」の貯金玉です。
寺島風の貯金玉を出してきて、つらつらながめて、これも前垂れとぶちがニス仕上げであったことに、初めて気づきました。


尾張屋風だけ、ちょっと小さめにつくられていますが、「あぶ惣風」招き猫貯金玉というのもちょっと小さめのようです。


こちらは座猫御殿風。風流に花や蝶が描かれています。


座猫は、我が家にもう1匹生息していました。


新しい型の「ぴいぴい」です。


古いのと比べて見ると、前垂れに縮緬を使っているところが違うのは一目瞭然ですが、顔に髭が生えているのといないところも違います。


ぴいぴいは、板と板を和紙でつなぎ合わせたふいごの上に乗っているおもちゃで、招き猫のほかにも、だるま、タヌキ、犬などのぴいぴいがあります。。


「顔がいのち」というキャッチコピーを使っているのは、吉徳人形店ですが、いまどきさんのつくる土人形たちは、どれもとてもいいお顔です。



 

2 件のコメント:

hiyoco さんのコメント...

貯金箱じゃなくて貯金玉っていうんですね。お金の取り出し口はあるんですか?壊さなきゃいけないとか?
花模様の猫がにっこり笑ってかわいいです。ウリ坊もカラフルでいい。
いまどきさんのブログをちょこっと見たら、春さんちに来る前の猫たちがスタンバっていました。遡って読むと、気の毒なぐらい忙しそうな様子が伝わってきました。

さんのコメント...

hiyocoさん
かつては土でつくられたコイン入れは宝珠みたいな玉の形のものが多く、貯金玉と言われていました。私もよく貯金玉という言葉を使ってしまいます。
取り出し口はないです。昔の貯金玉は西洋のピギーバンク同様、割るしかなかったみたいですね。もっとも、口に厚手の紙を差し込んでうまくやると出てくるけど(笑)。
いまどきさん、忙しそうでしょう?でも、たくさんの人形たちに囲まれて、楽しそうでしょう?(笑)
いまどきさんのおかげで、消えてしまった今戸人形が再現されているのですから、すごいことです。