2013年2月6日水曜日
竹のじょうご
鍵もかけずに留守にして帰ってみると、玄関に大きな箱が届いていました。
「なんだろう?」
送り主を見ると、宮崎県日之影の小川鉄平さん。かれこれ六、七年前に、にお願いしていたじょうごができあがったのでした。
三年ほど前に一度連絡を取り合い、半年ほど前には、まだ気が変わっていないならつくると、ご連絡いただいていたので、一、二年のうちにはと思っていましたが、思いがけず早くできてきたものでした。
できたばかりの籠は緑色が鮮やかで、本当に美しいものです。これが、一ヶ月も経つと茶色くなり、十年も経つと、琥珀色になってきます。
細くなった部分は竹を薄くしなくてはならなかったので、弱くなっているとのこと、確かに押してみるとたわみますが、そう力がかからないところなので、注意深く使えば、問題はないと思います。
お米や大豆を缶や俵(袋)に移す時に使う、竹のじょうごは、廣島一夫さんの作品集『A Basketmaker in Rural Japan』 に載っているじょうごの形でつくっていただきました。
このじょうごも廣島一夫さんのおつくりになったもので、昨年、近江八幡で開かれた【現代の名工 廣島一夫の手仕事】に展示されたものですが、私がつくっていただいたのとは、上の口の形が違います。
あの、たくさん籠をおつくりになった廣島さんでさえ、生涯に十個もつくらなかったというじょうご。
つくっていただいた私は大変幸せでしたが、じょうごをつくるのはこれが最初で最後かもしれないという小川鉄平さんも幸せだったとうかがって、安堵の胸をなで降ろしました。
今回、小川鉄平さんが新しく試みてくださったのは、「かけ手」の竹の縄です。 「かけ手」は竹を打って柔らかくして、綯ったもので、結ばずに籠に取りつけてあり、すっきりしていてとっても素敵です。竹でこんな縄ができるのですね。
じょうごに限らず、道具は使っているより収納の時間の方が長いので、「かけ手」があると嬉しいものです。
いつも、小川鉄平さんの仕事は全体が美しいだけでなく、細部も一つ一つ美しく仕上がっています。
近江八幡での展示会にかかわったNPO法人「はれたりくもったり」が発行した冊子、『残したい技、引き継ぎたい心』(harekumo@biwako.ne.jp、0748-75-2297)を注文していたのですが、奇しくもじょうごと同じ日に届きました。そして、じょうごと一緒に小川さんが同じ冊子も入れてくださっていました。
昨年夏の展示会は、母が我が家に滞在した日々とぴったり重なっていたので、残念ながら家を開けることはできませんでした。
冊子を見ると、800人の来場者があり、とても盛況だったようです。
その冊子に載っていた、廣島一夫さんのお写真です。
お元気ですが今年で98歳になられ、昨年から引退していらっしゃいます。
日之影独特の背負子「かるい」を編む小川鉄平さんのお写真。山がちの日之影では、急斜面を上り下りする時、下の方が薄い背負子の方が使いやすく、かつては農家の方たちも自分でかるいをつくっていたようでした。
そして、ときおりこのブログに「水俣のかごやさん」として登場いただいている、井上克彦さんのお写真です。
その冊子には、廣島一夫さんのお言葉が載っていました。
おりが作る籠は見るためもののじゃねえとよ。
使うためのものじゃ。
肝に銘じて、しっかり使いたいと思います。
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