タイのブリラム県の村で、元同僚だったトンカムの母上のお姉さんからいただいた、キンマの道具を入れたりしておく籠です。
籠の材料は、つくった方から聞かなかったらたぶんわからなかっただろうもの、ココヤシの葉脈です。
底は、籠目から物が落ちたりしないよう、葉脈を密に並べて、外側に3か所に竹ひごをあてて、ナイロン糸で綴ってあります。
底部分の、端の始末はどうしたのか、底に綴りながら立ち上げていく胴部分の端は、切りっぱなしになっています。
切りっぱなしの部分は、仕上げ時に薄く板にした竹で覆ってあり、目立ちません。
胴の葉脈は編むことなく、1本おきに左右に振り分けて、まずは竹ひごを外側からあてがってしっかり綴ってから立ち上げ、途中で竹ひごを内側からあてて綴り、さらに上部で、縁の始末をする前に竹ひごを外側に回して綴り、形を整えています。
胴の葉脈の何本かはまとめて、そのまま持ち手にします。
真ん中の束のナイロン糸の下に、葉脈の端が見えるので、反対側から伸ばした葉脈をここまで重ね合わせていて、持ち手が壊れないようしっかりつくってあることがわかります。
八郷に住むGさんは、私の働いていた団体でインターンとして1年タイに行っていましたが、今は八郷に住んでいます。というか、私がGさんの家を訪ねたのがきっかけで、私たちも八郷に越してきたという経緯があります。そのGさんの家で、同じくココヤシの葉脈で底を楕円形につくってオレンジ色のナイロン糸で綴った籠を見たとき、
「あら、トンカムのおばさんがつくった籠ね」
というと、Gさんが、
「えっ、どうしてわかったの?」
と、びっくりしていました。
他では一度も見たことがないので、一目瞭然です。
他では一度も見たことはありませんが、同じ形のミニチュア(ままごと?)の籠は持っています。
バンコクの、品ぞろえが素敵だった雑貨屋さんで買ったミニチュアの籠です。
トンカムのおばさんの籠と違い、ココヤシの葉脈ではなくて細い竹ひごを使い、ラタンで綴っています。
厚みがない、葉脈よりしなやかな竹ひごなので、編むこともできると思いますが、この籠はこういうスタイルなのでしょう、胴部分は編まないで、上下とも内外両側から竹ひごをあてて、綴ってあります。
底は平たい竹ひごで編んであり、胴との関係も、ラタンできれいに始末されています。
持ち手は、ミニチュアですからそう力もかからないので、ラタンであっさりつくられています。
ココヤシの葉脈の籠は直径27センチ、ミニチュアの籠は直径9センチです。
これを見ると、必要に迫られれば、身近などんなものも籠の材料になることがわかります。
タイは日本の1.5倍の面積に日本の半分ほどの人が住んでいます。しかも国土は平たんで、乾季の水の問題はありますが、どこにでも住めます。むしろかつては人口の少なさが問題で、昔の戦争の目的の多くは、捕虜として人を連れてきて住まわせることでした。
タイ東北部の集落は、たいてい100戸以下です。
村が立て込んで来ると、窮屈さを感じた人たちが村を飛び出し、未開の地を開いて新しい村をつくったという歴史がありますが、新しい村をつくったとき、人々は必ず有用なココヤシを植えました。そのため、遠くから集落を見て、ココヤシの丈の高さで、その集落ができて100年以上経っているとか、せいぜい80年、50年などとわかります。
葉脈を、今はナイロン糸で綴っていますが、元はラタンを裂いたもので綴っていたかもしれないし、あるいは草でつくった紐で綴っていたかもしれないし、もっと扱いやすい木綿糸や絹糸で綴っていたかもしれません。
ブリラムでは、綿は今では育てていませんが蚕は各家で飼っていて、この籠をおばさんからいただいたとき、トンカムのお母さんからは、自分で育てた蚕から採った糸を染めて、自分で織った絹の布をいただいています。
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