刃物が好きです。鎌をUPしようとして、「やっぱりカンボジアの鎌からだよなぁ」と思って、高いところの壁にディスプレイしてあったのをはずしてきたのですが、せっかく糸で籠に縫いつけたこの鎌、外すとあとが面倒なので、このまま写真に撮ってみました。
タイの農作業について書かれた本の中で、クメール(カンボジア)スタイルの鎌の存在を知ったのは、1980年代の半ばだったでしょうか。モノクロの小さなイラストだったか、写真だったか、見たことのない形だったので、いつか見てみたいものだと思ったことでした。
タイのスリン県には、クメール人の村がたくさんあります。スリンやブリラムに行くたびにクメールの鎌をさがしてみましたが、まったく手がかりはありませんでした。
1990年、初めてカンボジアを短期訪問しました。国連に国としてやっと認められ、西側諸国との関係がはじまったばかりのころで、車は古い型のものが少ししか走っていない時代でした。
プノンペンから、タイ国境に近いバッタンボン県に行く途中だったでしょうか。こぼれんばかりの農民を、荷台に立たせて運んでいるトラックとすれ違いました。そのうちの一人が、なんと、あのクメールの鎌を持っていたのです。
「ほら!こんな鎌」
私は絵を描いて、今は亡き、もと同僚のUさんに示し、町に着くたびにさがしてもらいました。しかし、クメールの鎌はまったく見つかりませんでした。
見つからなかったはずです、この鎌は、プノンペンより東の、プレイヴェン県で使われているものだったのです。
カンボジアの稲作と言っても、地域によって大きく違います。雨季に、田んぼに雨水が溜まったら田植えをする地域、メコン川の増水がはじまったら田植えをする地域、メコン川の水が引きはじめたら田植えする地域、乾季に潅漑水で田植えする地域などなど、稲の種類も、育てる時期もまったく違います。
地域によって、肥沃な土地もあれば、砂地もあります。小農もいれば、大農もいます。農具もそれそれの土地に合ったものを使っているのです。
私がクメールの鎌と出合ったのは、もっとずっとあとのことでした。
この鎌は、他では見ることのできない、独特な形をしていますが、まず、曲がった柄に引っ掛けて、倒れてしまった稲を起こします。そして、手をくるっと返して、今度は刃で、稲を刈るのです。まるで、クメールダンスのような優雅な動きです。
これは、『道具と使い方』という本に載っている、クメール鎌のイラストです。
『道具と使い方』には、素敵な道具がたくさん載っています。あるギャラリーが出版したものですが、出版に合わせて展示会もやりました。ギャラリーがアパートの近くだったので、会期中は何度も足を運んだものでした。
表紙は、牛の口に被せる籠の写真です。田起こしのときなどに使います。
鎌の柄は、木の枝などを利用してつくるので、一つ一つ、形が違います。
特徴は、柄の端に、美しい彫刻がほどこされていることです。
これは、横長な上の鎌に比べれば、ずいぶん縦長です。
飾りと補強をかねて、金属も部分的に使われています。
この鎌は、携帯しやすいようになのか、3つに分解できます。
これらの鎌を見て、鉄にこだわっているある友人が、「それにしても、刃は貧弱だなあ」と、言いました。
確かに、柄には意匠を凝らしていますが、刃はついていればいいという感じでしょうか。
日本人が鎌の柄にこだわっていないように、カンボジア人は刃にはこだわってないようです。
典型的な彫刻です。
美しく、彩色したものもあります。
そしてこれは、猿が果実を抱いた、とても珍しい彫刻がほどこされた鎌です。
上から二番目の鎌だけは、市場で買った、新しいものですが、あとは古いものです。
今でも、クメールの鎌を見ると、ついつい欲しくなってしまいます。