2024年2月11日日曜日

ガザを思う

先日、南アフリカに関する集会がありました。
スピーカーの一人Tさんが、カフィーヤを肩にかけていました。ANC(アパルトヘイト撤廃を掲げて組織されたアフリカ民族会議)が非合法のころ、日本のANC事務局を担っていたTさんのことだから、ガザに連帯の意味でカフィーヤをかけてきたのがわかりました。
アパルトヘイト反対運動では、誰もが参加できる運動として、南アの産物の不買運動がありました。アパルトヘイト反対運動は国際的な広がりと草の根の広がりを見せ、1990年にANCは合法化され、ネルソン・マンデラは27年のと投獄生活から釈放され、1994年の総選挙へとつながりました。
しかし、ガザに対して今、何ができるでしょう? 集まった人たちの頭に重くのしかかっているのは、ガザの窮状に対して、私たちは何ができるかということでした。


今回、ハマスの襲撃にUNRWA(アンルア、国連難民パレスチナ事業機関)の職員がかかわっていたとのことで、UNRWAへの国際社会からの支援が停止され、さらにガザの人たちの生活を厳しいものにしていると同時に、「軍事作戦」の中止を難しくしています。しかし、このことが話題に上ったとき、アフリカ研究者のKさんは、
「そりゃぁ、ガザの人たちを間近で見ていれば、人間ならシンパシーを感じないでいられるわけがないよ」
と言い切りました。
先住のパレスチナ人の行動の自由を奪い、難民キャンプが70年以上続いていることこそが異常なのです。


ちょっと前に、ラジオで安田菜津紀さんのヨルダン川西岸訪問の報告が放送されていました。訪問中、深夜にサイレンが鳴り騒然となったこと、イスラエル兵によって両替所が襲撃されて、両替所のお金が盗られたこと、これは当たり前の社会では立派な犯罪なのに、パレスチナ人は声を上げることもできないでやられ放題だったということ、などなど話されていました。
ちなみに、イスラエルはパレスチナが独自の通貨を持つことを許さず、パレスチナ人もイスラエルの通貨である「シェケル」を使っています。
パレスチナ人は、夜中に突然襲撃されてお金が盗られるだけではなく、道路のいたるところに設けられた検問所では止められて調べられ、難癖をつけられます。


ヨルダン川西岸には、違法なイスラエル人入植地が270カ所以上あります。入植者を守るという名目で、イスラエルはあちこちに兵士や検問所を設置しているので、町から町への移動や村から買い物に行くときで、パレスチナ人は命がけです。少しでも口答えしたりすれば、捕まって砂漠にある刑務所に送られ、冷房もない刑務所で、ありとあらゆる拷問を受けたり、強制労働をさせられます。
最悪、検問所で撃ち殺されます。


今回の衝突で、ハマスのとった人質と交換に、数倍のパレスチナ人拘束者が解放されていますが、いったいどのくらいのパレスチナ人が拘束されているのか、想像もつかないほどです。
イスラエルがパレスチナ人に対して日常的に何をしているかは、日本ではほとんど報道されません。ハマスの人質と引き換えに、パレスチナ人が十倍もの人数で解放されていること、それが報道されても、ではいったいパレスチナ人がなぜそんなに多く拘束されているのかという報道はありません。


昨年12月、南アフリカは、ガザでイスラエルが続ける「軍事作戦」に、ジェノサイド(集団虐殺)条約違反があるとする訴えを、ICJ(国際司法裁判所)に提起しました。アパルトヘイトという差別政策の過去を持つ南アフリカが、「ホロコーストを経験したユダヤ人国家」と世界に見られてきたイスラエルをジェノサイドで問うという構図自体が、「歴史はなぜ繰り返されるのか」という訴えかけそのものでした。
南アフリカはジェノサイドを緊急に防止する措置を求めており、1月26日、ICJはジェノサイドを防ぐ全ての措置を取るよう求める仮保全措置(暫定措置)命令を出しました。「踏み込んだ判断」「非常に画期的」という声が飛び交いました。
ただこの措置は、法的拘束力を持つものの、強制力はありません。かつ、イスラエルはこれまでも、自らの軍事作戦を「自己防衛」であると主張し続け、虐殺の実態を正面から認めようとはしてきませんでした。
パレスチナを、自治区ではなく完全掌握すると豪語しているネタニヤフ政権に対して、この仮保全措置がどこまで効力を持つのか、絶望的な気持ちになりながらも注視していきたいと思います。

写真は、1990年代の半ばにヨルダン川西岸のベツレヘムの大学で行われた、パレスチナの民族衣装のファッションショーの写真です。モデルはみんな高校生、民族衣装の美しさとモデルの可憐さにうっとりしたものでした。


そして最後の写真は、ガザの中心街のレストランでいただいたオイルポットです。
ガザのほとんどの人々は、生まれたときから自由を味わったことがありませんが、優しい人たちです。






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