2022年6月28日火曜日

マフラーの仕上げ

織物教室の先生のKさんが体調を崩されていたのですが、無事回復されて、先週、3か月ぶりに教室が再開しました。
織り機やその周辺機器を置いた部屋には、染めもののできる土間が併設されています。生徒さんたちはそれぞれの進み具合で、そのコーナーで原毛を洗ったり、 染めたりします。

昨日は、以前大物を織りあげたOさんが、冬の間は冷たくて厳しいということで先延ばしていた「仕上げ」をする予定でしたが、Oさんが体調を崩されてお休みされたので、急遽、私がマフラーの仕上げをすることになりました。
まず、繊維を緩めるために、マフラーを60度のお湯に約1時間浸けました。


次に、房を整えます。
マフラーを吊り下げ、その下にお湯の入ったたらいを用意し、ときおり房をお湯に浸しながら整えます。
写真はありませんが、経糸(たていと)は数本ずつ(ここでは6本)まとめて、先を結んでありました。
そのまとめた経糸を、糸を撚った方向(この場合はS字方向)と反対(Z字方向)にねじって、掌で揉んで、フェルト化させます。


房がちょっとまとまってきたら、次にマフラーを畳んで土間に置き、片面だけですが全部の面が順繰りに上にくるように畳みなおして、その都度しっかり踏みます。
半分に畳んで、それを三つ折りにしているので、合計6面を踏むことになりました。


新しい面を上にする時はせっけん液をかけ、いつでも湿っているように何度もお湯をかけながら根気よく踏んでいきます。


経糸と緯糸(よこいと)は、もともと糸として存在しているのですが、それが絡み合って、布になるのを助ける気持ちで踏みます。
せっけん液は、マフラーの重量の5%ほどのせっけん(モノゲン)をお湯に溶かしてつくっておいたもの、お湯は40度くらいです。


平らにして踏んで、経糸と緯糸が歪まないように少し絡み合ってきたら、次はマフラーをお湯の入った容器に入れて攪拌します。
十分な量のお湯の中で何度も攪拌棒で押して、マフラーを押しつけるというより、水流を起こす気持ちで作業します。あらかじめ、平らにして踏んでおいたので、経糸と緯糸の関係はある程度定まっていて、ゆがんだりはしないものの、布がねじれないように、ときおり水中で畳みなおします。
さて、これには時間がかかりました。もうよいかなと何度か引き上げて、脱水機に数秒かけて、布の出来具合を見るのですが、そのたびにKさんから、
「まだ、まだ」
と言われ、1時間以上攪拌して、やっと(渋々か?)OKが出ました。
マフラーに触ってみると、糸が糸としてごつごつせず、優しく絡み合って柔らかく、布になりかけています。
この工程を、焦るあまり熱い温度のお湯でやったり、あるいは攪拌しすぎたりすると、糸はフェルト化して、柔らかさが失われて固くなってしまうので気をつけなくてはならないということですが、やりすぎることがあるとは思えないほどの、地道で時間のかかる作業でした。
これで出来上がり?
いえいえ、昨日1日では仕上がらず、次回、縁出し(角出し?)という作業が残っています。布の「みみ」を整えるため、平らな台の上において、今度は棒で叩くのです。

昨日は暑い日で、汗だくでよれよれ、家に帰ったらすぐにシャワーを浴びました。
小さなマフラーでさえ仕上げにはこれほどの労力を使うのですから、Oさんの大物、80センチ幅で200センチ長さのものが2枚ですから、どれだけ大変か、恐ろしくなります。
冬もつらいけれど夏もつらい!
織物は、準備と仕上げにエネルギーの80%を割くと、前から思っていましたが、原毛を糸にして織りあげるというホームスパンでは、織り機に向かって織るエネルギーは、工程全体の5%以下だと思われます。








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